フランス人イラストレーター、イザベル・ボワノさんが見つけた、ささやかで幸せな日常。6月の楽しみ方と、イザベルさん流・気取らない初夏のワードローブについてのエッセイを紹介します。
(『フランス田舎暮らし12カ月』より)
Juin
6月
Les mystérieux iris
[ミステリアスなアイリスの花]
6月はパリを歩くのに理想的な月
構造が複雑で全容を見せないアイリス。秘密の世界へと続く、深い闇のような色の中を、鍵穴からのぞきこんでいるような気分になる。
フランスのみんなが待ちに待った、夏のはじまりを告げる月がやっと来た!
日が延びて、夕方の時間をたっぷり楽しめる6月は、カフェやレストランのテラス席も夜までたくさんの人でにぎわう。
夏のバカンスの計画を立てながら、自然が恋しくなったり、生き生きとした花や深緑の葉を、真夏の本格的な暑さが訪れる前に存分に愛でることができる月でもある。
気候の変動とともに、夏は年々暑くなり、猛暑の日には、外に出て何かするだけで疲れきってしまうことがある。
だからなおさら、6月のさわやかなお天気を存分に活用して、町や田舎のよさを、いろんなかたちで満喫することが大切。
自然の中で、きれいな花や昆虫を観察しながら、じっくり時間をかけて散歩するのも好きだけど、6月の晴れた日にふらりとパリに出かけて、友達とテラスでアペロ・ディナトワール※をして、楽しく過ごすのも好き。
※ディナーを兼ねたアペリティフ(おつまみとともにお酒を楽しむこと)
サン・ルイ島でアイスクリームを食べて、セーヌ河岸をぶらぶらし、ついでに古本が並ぶブキニストに立ち寄って、掘り出し物がないかチェックする。
鼻先をくすぐる風を感じながら、パリの通りを歩きまわるのに理想的な月なのだ。
夏の骨董市も再開しはじめ、毎週末、そこかしこで開催されている。私のコレクションに何か新しく買い足せるチャンス、とはいえ、買い過ぎには注意しなくちゃ!
Tenue de juin
[6月のワードローブ]
着ていてラクで快適な服を選ぶことが、いい一日を過ごすために必要不可欠なポイント。
日本では、自分の体型と好みに合った服を見つけられるのに、フランスでは納得いくものを見つけるのが、なかなか難しい。形がよくても、生地が気に入らなかったり、その逆のパターンもあったりする。
幸いなことに、フランス語に翻訳された日本のソーイング本が、こちらでたくさん出版されているので、私が心地よく着られる服を自分で縫うことができる。
写真のパンツは、日本の生地ブランド「CHECK&STRIPE」の布と型紙を使って手作りしたもの。
ストライプの布は、私にとって夏のシンボル。海辺のキャビンやパラソル、船の中で見かけるランドリーバッグを思い起こさせる。
本記事は『フランス田舎暮らし12カ月』(パイ インターナショナル)からの抜粋です
〈文・撮影・イラスト/イザベル・ボワノ〉
イザベル・ボワノ(Isabelle Boinot)
フランス、アングレーム在住のアーティスト、イラストレーター。1976年、フランス西部の町ニオール生まれ。雑誌や書籍、雑貨、広告などさまざまな分野で活躍中。著書に『シンプルで心地いいパリの暮らし』(ポプラ社)、『わたしのおやつレシピ』(小学館)、『パリジェンヌの田舎暮らし』『おとしより パリジェンヌが旅した懐かしい日本』(パイ インターナショナル)などがある。2024年4月に『フランス田舎暮らし12カ月』(パイ インターナショナル)を発売。
インスタグラム:@isabelleboinot
webサイト:http://i.boinot.free.fr/
◇ ◇ ◇
何気ない一日を慈しむ。パリジェンヌが見つけた、ささやかで幸せな日常。フランス人イラストレーター、イザベル・ボワノの1月から12月までの日常を、日記・ブーケ・ワードローブ・お出かけ・お買い物・雑貨コレクション・レシピ…などの10のテーマで紹介。好きなものに囲まれた、穏やかで心地よい暮らしを送るためのヒントが詰まった1冊です。