痛みもかゆみもなく進行し、気付かぬうちに視野が欠けていく病気「緑内障」。その多くが原因不明の原発緑内障です。真鍋眼科院長で緑内障専門医の真鍋佑介さんに、緑内障リスクの高い症状について伺いました。
(『専門名医が教える!緑内障に効くたった2つの習慣』より)
こんな人は要注意!
緑内障の危険度チェック
視力検査と眼圧検査の結果に異常ないから緑内障ではないというわけではありません。健康な人、目がいい人でも緑内障になる可能性があります。
眼科検診を受けて定期的にメンテナンスをしていきましょう。
この症状があると、緑内障リスク大
近 視
近視になると、眼球が引き伸ばされ、楕円形になってしまいます。強度の近視では、視神経が脆弱で緑内障の合併頻度が高くなります。
しかも強度の近視では近視による視野変化をきたす場合があり、視野障害がある場合には緑内障だけでなく近視による影響を受けている場合があります。
糖尿病
糖尿病のある人は眼圧が高くなりやすく、緑内障になりやすいといわれています。また、糖尿病の合併症に「糖尿病網膜症」といって、網膜への血液の流れが悪くなって障害が起きてしまう症状があります。
糖尿病網膜症が進行すると、網膜の中でも最も大事な黄斑に水ぶくれができてしまったり、網膜出血や網膜剥離を起こします。
【糖尿病網膜症】
⚫︎ 国内の中途失明原因3位
⚫︎ 以前は原因1位だったが、糖尿病患者の血糖・血圧コントロールが改善したため、重篤化が減った
⚫︎ 網膜症が起きた場合、眼科と内科の連携が必要
ストレス
視神経、網膜への血流量の調節は、自律神経系に大きく支配されています。
ストレスにより自律神経系のバランスが崩れると視神経や網膜に血液を送る血管が異常に細くなり、血流量が減少した状態が続いて、視神経に影響すると考えられています。
乳頭出血
視神経周辺の血管は、眼圧の影響で出血をきたしやすいのです。視神経乳頭に出血があると、緑内障が2〜4倍進行しやすいとされます。
乳頭出血は正常眼圧緑内障に特徴的な所見で、一般的には眼圧下降不十分のサインです。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時に数秒間呼吸が止まってしまう症状も緑内障を進行させるリスクになっています。睡眠時無呼吸症候群になると、10倍も緑内障になりやすいとされています。
夜間に血液中の酸素濃度が低下し、酸化ストレスによって網膜の視神経に障害が起きると考えられています。
低血圧・頭痛持ち・冷え性
痩せ型で低血圧、頭痛持ちで冷え性。自律神経の働きが不十分で、血の巡りが悪いタイプで、「フラマー体質」と言います。
眼圧が低いのに乳頭出血を起こし、緑内障が進行することもあります。軽い運動をして血液の循環をよくすることと、漢方薬での改善を目指します。
目の外傷
外傷性の緑内障があります。球技でボールが目にぶつかったり、ボクシングなど格闘技で目を傷つけてしまった場合、隅角の構造が変形してしまい、眼圧が上がる場合があります。
または出血によって詰まりが生じ、眼圧が上がる場合もあります。数年を経てから緑内障が出る場合もあるので注意が必要です。
血縁者に緑内障患者がいる
血縁者に緑内障の人がいると、その人の緑内障発症率が2倍になると言われています。緑内障の検診は40歳以上を推奨していますが、緑内障の家族歴がある人は20代のうちに眼科検診を行うことも考えてください。
場合によっては早発型発達緑内障といって、薬物治療が難しいこともあります。
視神経は一度失われると回復しません。目に症状がなくても、一度しっかりと緑内障の検査を受けてください。
<監修/真鍋 佑介 イラスト/森崎達也(株式会社ウエイド)>
真鍋 佑介(まなべ・ゆうすけ)
真鍋眼科・真鍋婦人科院長。「近視予防を広めたい」という意思から眼科医を志し、2015年から岐阜大学病院の眼科医として分野を問わず診療を行う。のちに緑内障専門医として診療と研究に従事。2021年から真鍋眼科・真鍋婦人科に勤務。なんでも相談できる「かかりつけ医」をモットーに患者を支えている。
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中途失明1位の緑内障。2つだけ守れば99%失明しません。
気づかぬうちに進行し、いつの間にか視界が欠けている……。「緑内障=失明」と捉えてしまうと恐ろしい病気ですが、きちんと検査・治療をすれば実は99%失明することはありません。緑内障は、日本の中途失明原因の第1位であり、日本人の40歳以上になると20人に1人がかかる身近な疾患です。しかし残念ながら、緑内障という病気はいまだに十分に周知されていない疾患で、未治療で放置されその結果失明率が下がらないのが問題となっています。
生涯失明しないように、病気を知ってしっかりと怖がり、そのうえで安心するための生活習慣、心構えを、最も信頼されている緑内障専門医の真鍋佑介先生がまとめてくれました。
この本が緑内障と長くうまくつきあえるきっかけになるはずです。