猫同士の相性もあるけれど、最初が肝心
うちは11匹の大猫家族。
全員が保護猫や里子になった猫ばかりで、だから、それぞれに「はじめての日」がありました。
時々、訊かれます。
「こんなに猫がいたら、ケンカになったりするんじゃないの?」
ところが、我が家は本当に穏やか。遊びの追いかけっこは日々開催されていますが、誰ひとりとして仲の悪い子はおらず、血の繋がっていない猫同士も、いつもくっついて眠っています。その理由のひとつには、おそらく「最初の出会い」が良かったのかなと思っています。
先住猫と新入り猫の関係をゆっくり築く
私自身、学生時代、いじめを受けた経験を持ち、他者がとても苦手。だから、新入りの猫にも、家に迎え入れ他の子と会わせる時は、「こわいんじゃないかな?」といつも心配しています。
また逆に迎え入れる先住のほうの猫たちにも不安があるでしょう。
というのが私は自分に自信がなく、自己肯定感がとても低いところが。いつも自分の大切な居場所を脅かされることを恐れています。仲良しグループに新しい人が入ってくると、自分なんかいらなくなられてしまうんじゃないかと、勝手に不安になってしまうのです。
だから、迎える先住の猫にも、そんな不安を持たせてはいけない、と細心の注意を払います。
そのため、出会いの瞬間はとにかく、双方に気を遣って。
よく聞く話ですが、わが家でも、最初は新入りさんをケージに入れ、しばらくそこで暮らしてもらいます。それを先住の子がチェックする形で慣れていき、時間をかけて「あたらしいヤツが来たな」と理解していってもらうのです。
そうすると、新入りさんは自分の安心スペースになっているケージで隠れることもできますし、先住さんは慣れ親しんだ家で気を大きくして迎えることができます。
まず先住猫を最優先にかわいがる
また、少しずつケージから出すときも、必ず先住さんをかわいがりながら。「あなたが先輩だよ。だからいろいろ教えてあげてね。この子は何も分からなくて不安だからね。守ってあげてね。えらいね。優しいね」と話しかけています。
新入りさんをケアするのは先住さんのいないところで。新しい場所でドキドキしている分も、いっぱいあまやかします。
不思議なことで、双方に愛情をたっぷり与えるだけで、対面させてもケンカはほとんどおこらずスムーズに受け入れてくれました。
ごくまれに、怒りん坊の猫がいるときは、しばらく一室で新入りさんに別れて生活してもらい、やっぱり少しずつチェックしてもらう。こんな感じで、みんな、仲良くなりました。
大切なのは、そばにいる私たちが「ケンカをしたらどうしよう」「仲が悪いんじゃないかな」と緊張してしまわないこと。
かならず仲良くなる! だって私たちは家族なんだから! と信じきって接すると、不思議なことに、他人……もとい他猫同士が、あっという間に「家族」になってくれるのです。
そして、これは、一生かけてそうなのですが、最初のうちは特に「愛情」を注ぐこと。
「かわいいね」「大好きよ」「仲良くしてくれてありがとう」
褒められて嬉しいのは人間だけじゃありません。猫も人間の言葉や温度が分かります。
仲良くしてくれることをいっぱい感謝しているうちに、絆はどんどん深まって、やがて毛づくろいし合う感動の瞬間が見られるのです。
咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」