(『天然生活』2023年7月号掲載)
冷凍保存を味方にして、夏の料理をより手軽に
暑さで素材の保存が難しい夏。
あまりにお買い得で、つい多く買ってしまった肉や魚を、消費期限間近に冷蔵庫にて発見。そこであたふたとパックごと冷凍して、そのまま忘却の彼方へ。後日、掘り起こして解凍し、調理してはみたものの、微妙な味わい。やっぱり冷凍って、味が落ちるのは仕方がないのかも?
ところがその問題、少し手順を変えるだけで一気に解決。冷凍は、まず下味をつけてから。それだけで、忙しい日に大助かりの、おいしく頼れる存在に変身します。
「冷凍することで、調味料が素材の芯まで浸透します。下味冷凍は、実に理にかなっているんですね。素材をやわらかくする効果のある玉ねぎや、しっとりさせる効果のあるオイルなどを上手に使うと、よりおいしさが増します。活用法も簡単で、解凍したら火をとおすだけ。短い加熱時間でも、時間をかけて煮ふくめたかのような、味わいのしっかりしたひと品に。暑い時季はコンロの前に長く立つのは大変ですから、これも助かるポイントですね。せっかくなら、“とりあえずの冷凍”ではなく、“冷凍だからこそ”のメリットを生かしましょう」(瀬戸口しおりさん)
ちなみに肉や魚をそのまま冷凍するなら、多少面倒でもパックから出して小分けに。いくつかのコツを知っているだけで、料理の仕上がりは格段に変わります。
野菜はそのまま冷凍すれば熱も味も入りやすく
また、この時季に旬を迎える野菜は水分が多いため、傷みやすくもあります。とりわけトマトは、少し放っておいただけで、野菜室の中ですっかりやわらかくなってしまっていることも。すると瀬戸口さん、トマトは丸ごと冷凍するのがおすすめだといいます。
「本来、水分の多い野菜は冷凍に向きませんが、トマトは別。味わいもぐっと増し、しかも調理の手間が省けるようになります。わが家では、この冷凍トマトを使った夏ならではの料理が好評。夏野菜ではないけれど、丸ごとだとなかなか使いきれないキャベツも、新鮮なうちに冷凍するといいですよ。冷凍によって味しみがよくなりますから、淡い味つけにするときには、生よりむしろ重宝です」
さらに、息子さんのお弁当を毎日つくっていたころに助けられたのは、仕上げの調味料でアレンジ自在の主菜や、まとめて仕上げて小分けにした副菜の数々。
「冷凍って、うまく活用すれば、忙しいときにとても頼りになる保存方法。そのうえ、いつも以上においしくなるのですから、おおいに活用していきたいものですね」
冷凍のメリット
1 おいしさが増す
家庭の冷凍では、どうしても素材の細胞が壊れてしまうけれど、そこから味が入るという利点も。
きのこや貝は冷凍することでうま味がより強くなり、栄養価もアップする。
2 保存が利く
冷蔵ではどんどん鮮度が落ちていくが、冷凍にすれば、劣化の速度を抑えられる。
半分しか使わなかった玉ねぎや、半端に残ったしょうがやにんにくなどは、ぜひ“ついでの冷凍保存”を。
3 手間が減らせる
トマトの丸ごと冷凍は、おいしさと鮮度キープもさることながら、“面倒な湯むきが簡単”なのも長所。
キャベツや玉ねぎ、薬味類も、切ってあるものを使えば手間がひとつ省略できる。
4 お弁当の時短ができる
時間勝負のお弁当づくり。すでに完成している自家製の冷凍食品を使えば、時短ながら、食べ慣れたわが家の味を詰められます。
<料理/瀬戸口しおり 撮影/山川修一 取材・文/福山雅美>
瀬戸口しおり(せとぐち・しおり)
料理家。雑誌や書籍、広告で、体を思いやるレシピを多数発表。昔ながらのしみじみとした家庭料理、エスニック料理を得意とする。おいしく食べ切る冷凍保存にも詳しく、通販会社で通信講座を受け持つほど。著書に『自分ごはん時々おやつ』(主婦の友社)など。インスタグラム@kururichan
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです