(『天然生活』2021年7月号掲載)
自分に合った方法でお金とつきあっていく
「環境に負荷をかけない、エネルギーを使わない生活を心がけていたら、自然と節約になりました」
そう語るのは、省エネ生活研究家のアズマカナコさんです。洗濯機も掃除機も持たず、5人家族で月々の電気代はたった500円。実践しているのは、電化製品が一般的ではなかった戦後すぐ、昭和20~30年代の暮らしです。
アズマさんにとってこの生活は、手間のかかる大変なことではなく、できないことができるようになっていく、楽しいことです。
「失敗しても諦めずに続けると、コツをつかんで楽になっていきます。削れるものは削る最低限の暮らしは、この先どうなってもやっていけるという自信になり、私にとってはお金に対する不安を和らげる保険のような役割もあります」
とはいえ家族には無理強いせず、生活の仕方やお金の使い方は、話し合って決めています。
「夫はよく缶ビールを買いますし、子どもが成長するに従い、お小遣いを欲しがったり、テレビを見たがったり、興味や暮らしが変わってきます。自分の価値観を押し付けない、ストレスにならない生活を、と思っています」
もともと生活必需品以外の買い物には興味がなく、自分でできることは自分でやり、生き物を飼ったり、ハイキングしたりすることが好きなアズマさん。いまは家事の合間に、畑で野菜を栽培し、充実した毎日を過ごしています。
ただしこの省エネ生活、誰にでもおすすめというわけではなく、自分の得意なことをするのがいい、とも。
「私はエコを意識しながら、工夫して節約することが好きですが、働いてお金を稼ぐほうが向いている人もいるのではないでしょうか。負担なく続けられる、自分に合う方法でお金とつきあっていくことが、大切だと思います」
アズマさん流 お金と仲良くつきあう心得3
お金と仲良くつきあう心得1
ぶれない優先順位をもつ
あらゆることに節約しようとするのではなく、お金の使い道にメリハリをつけることが満足度の高い生活につながります。アズマ家では光熱費は徹底的に削るものの、食費は惜しみません。
「なるべく無農薬や無添加の食材、伝統的な製法でつくられた調味料などを使うことで健康に役立ち、長い目で見れば医療費の節約になります」
お金と仲良くつきあう心得2
1カ月の収支を把握する
紙の家計簿に用途と金額を書き込み、むだ遣いをしていないか月末に見直して、家計を管理しています。
「食費や教育費などと細かく予算を分けるよりも、1カ月の収入を支出が上回らないように、全体で幾らと使えるお金を把握するほうが向いていました。イレギュラーな出費がない限り、オーバーすることはありません」
アズマさん流 お金と仲良くつきあう心得3
お金のルールは家族で相談
自分でできることはお金をかけずに手間をかけて行うのがアズマさん流の節約術ですが、子どもたちが成長するに従い、お金の使い方が変わってきたといいます。
「以前は市販のお菓子はほとんど買いませんでしたが、最近は小学生の息子も友だちと買いたいというので週に1回お小遣いをあげています。家族に価値観を押し付けず、ストレスにならないお金の使い方を考えるようにしています」
〈撮影/山川修一 取材・文/長谷川未緒〉
アズマカナコ(あずま・かなこ)
省エネ生活研究家。東京郊外で、昔ながらの暮らしを参考にしたエネルギーや環境負荷の少ない暮らしを送っている。著書に『電気代500円。贅沢な毎日』など。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです