• 子どもが独立し、再び夫婦ふたりの暮らしがスタートした「hal」店主の後藤由紀子さんに、夫婦のちょうどいい関係について伺いました。
    (『天然生活』2023年8月号掲載)

    お互いの負担は減らす

    家事を分担するだけでなく、お互いの負担を減らす工夫も。そのために、便利な調理家電を導入し始めたそう

    「きっかけは食洗機です。夫が手洗いしてくれていましたが、庭師という仕事柄、冬になるとどうしても指先の乾燥が大変で。使ってみたらすごく楽だというので、それなら私も何か買ってみようかなって、これを」と指さした先にあるのは、ジューサーと電気圧力鍋。

    残り野菜をポタージュにしたり豆料理をつくったりと、重宝しているのだそう。ぐっと調理の手間が減って、後藤さん自身も家事が楽になったと話します。

    「4人暮らしのときに使えばよかったんだろうけど、必死にやりくりしてて考えもしなかった(笑)。まーさんとふたりになって余裕ができたから、使ってみようと思えているのかも」

    夫のために炭酸水メーカーも導入。ペットボトルも出なくなり、ごみ出しの手間も減りました。

    ひとりの趣味も、ふたりの旅行も楽しむ

    さて、ここまででお気づきかもしれませんが、夫婦はお互いを名前で呼び合っています。これは、結婚当初に決めたことだそう。

    「子どもの前では『お父さん』『お母さん』というけれど、お互いは名前で。だって、私はまーさんのお母さんじゃないから」と笑う後藤さんの隣で、「まーさん」もうんうんとうなずきます。なんともおだやかで、平和な空気が流れます。ありきたりな質問ですが、けんかをすることはないのでしょうか? 

    「私が一方的に怒ることはあるけれど、それも減りましたね。あとは、お互いに好きなことをしているからストレスがたまらないのも大きいかもしれません」と後藤さん。

    夫婦でも趣味まで同じではないので、それぞれ楽しんでいるそう。後藤さんは、好きなミュージシャンのライブや映画を見るなどインドアなことが好き。一方、まーさんは、しまなみ海道をサイクリングしたり、自転車でキャンプに行ったりとアウトドア好き。

    「お互いに好きなことを楽しむ時間は大切に。それが仕事の息抜きにもなっているし、日々のやる気にもつながるなと思って。もちろん、一緒に楽しむこともあって、最近はよく旅行に出かけています。それもすごく楽しいの」とうれしそうに教えてくれます。

    きっかけは、結婚25周年を記念しての箱根旅行。子どもが巣立ったことで、ふたりで身軽に出かけるようになりました。行く先は、泊まってみたいホテルから決めることもあれば、話題のお店に足を運ぶことも。

    旅先では記念になるものを何かしら買うようにしているそう。そのひとつがコーヒー豆。「その土地ならではの喫茶店やカフェがありますよね。そういうところで好みのものを選んでね」と話すまーさんに、「帰ってきてからも楽しめるのでおすすめですよ」と後藤さんが続けます。

    ふたりになったから身軽に楽しむ

    お互いの時間を尊重しながら、ふたりで過ごす旅も楽しみながら。コンパクトになった道具や器があれば、積極的に取り入れる家電もあり。

    後藤さん夫婦を見ていると、ふたり暮らしは、それまでよりも身軽で選択肢が増えているように感じます。その分、楽しさも増しているよう。

    halの閉店時間がいまでも16時と早めなのは、ちょっと少なくなったおかずをつくりつつ、自分の時間も大切に日々を過ごしている証しなのです。

    夫婦のちょうどいい関係

    家事の負担を減らす

    画像: 出窓に収まるサイズを探して選んだ食洗機。「わが家でいちばん働いてます」

    出窓に収まるサイズを探して選んだ食洗機。「わが家でいちばん働いてます」

    ここ数年で、食洗機や電気圧力鍋、ジューサーなどが仲間入りした後藤家のキッチン。

    「相変わらず握力が弱いし、ここから先、少しずつ体力も衰えてくることを考えて、家事の負担も考え始めました」

    まーさんも「食洗機を使い始めたら、あかぎれに悩まされなくなって……。これは本当にありがたいプレゼントでした」

    行きたいところにふたり旅

    画像: 御朱印は後藤さんがひとりで出張しているときから、ずっと集めているそう

    御朱印は後藤さんがひとりで出張しているときから、ずっと集めているそう

    昨年からふたりでの旅行が増えたという後藤さん夫婦。箱根や神戸、那須、横浜などに足を運んでいます。

    「会いたい人や行きたいお店を目当てにしたり、ただ温泉でゆっくりしたり。コーヒーや地元の特産品などは、友人へのお土産としても、自分たちの記念にも買います。あとは御朱印をもらうのも楽しくて続けています」

    お互いの趣味を大事に

    画像: 右は後藤さんのライブや映画のチケット。左は、まーさんのキャンプグッズ

    右は後藤さんのライブや映画のチケット。左は、まーさんのキャンプグッズ

    休みの日は、それぞれの趣味を楽しむことも。必ずしもふたりで過ごすというわけではありません。

    「まーさんが『友達とサイクリングに行く』といったら快く送り出すし、キャンプグッズも好きなだけどうぞ、と。好きなことを尊重し合いながら。私は私で『今日はライブで遅くなります』と、楽しんでいます」



    <撮影/林 紘輝 取材・文/晴山香織>

    後藤由紀子(ごとう・ゆきこ)
    静岡県沼津市生まれ。東京の雑貨店で勤務後、2003年に沼津市で自身の店「hal」をオープン。自分で実際に使っていいと感じた器や調理道具、衣類などを扱っている。審美眼に定評があり、家族を大切にする暮らしぶりも人気で著書も多数。近著は20冊目となるエッセイ『雑貨と私』(ミルブックス)。インスタグラム@halnumazu

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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