(『天然生活』2023年6月号掲載)
そばにある自然を生活に取り入れて
神奈川県藤野という里山地域に住む中村暁野さん。木々や田畑に囲まれた生活のなかで、ごみを減らす、エネルギーの使い方を考えるなど、環境に配慮した暮らしを実践中。
そばにある自然を鑑賞するだけでなく、実用品としても生活に取り入れています。
「東京で暮らしていたころは、花は花屋さんで買っていましたが、ここでは季節の野花が豊かに咲いていて。あ、買うものではなく暮らしのなかにあるものなんだと。化粧品にしているヨモギだって都会にも生えているのですが、当時は見えていなかったんですね。以前は必要なものは買っていましたが、いまはお金がなくても得られるものがたくさんあると気づいて」
移住して変化したお金の価値観。節約についても、藤野での人づきあいから得たものがありました。
「節約を考えると、自分が持っている何かをだれかにあげるのはもったいないかもしれない。でもシェアすることで、あるときお返しにどうぞと野菜を頂いたり、自家製のパンを頂いたり。ゆるやかに人とつながっておおらかな心で手渡すと、想像以上に何かが返ってくることがあるんです」
まわりの自然や人と手を取り合い、環境を考えていくと、お互い補いながら、買わない暮らしになっていくのかもしれません。
アイデア_1
庭のヨモギとごま油で全身に使えるケアオイルに
薬草として知られるヨモギ。3~5月に、庭のヨモギで髪や肌を保湿するケア用オイルを手づくり。材料は、ヨモギと太白ごま油だけ。
鍋にヨモギと、ヨモギがつかるくらいのごま油を入れ、弱火で約20分熱します。粗熱がとれたら、こしてでき上がり。
アイデア_2
バナナの皮を発酵させ植物の肥料に
庭で育てている植物の栄養剤は、市販品を購入せず、バナナの皮と水を発酵させ液体肥料にしたものを使用。皮にもカリウムやミネラルなどの栄養があるため、肥料にできるそう。
皮がつかるくらい水を入れ、そのまま約1週間おいて完成。使い切ったら、皮は庭のコンポストへ。
「水につかっているので発酵してもにおいません」
アイデア_3
古いものを染め替えて、捨てずに長く愛す
色あせたソファのカバーは自身で藍染めを施すことで装いを新たに。
「藍の染料につけて、水ですすぐという作業を繰り返して染めるので、これだけ大きなものを自分で染めるのは大変でした。でも、染料は3,000円ほどなので染め替えサービスに出すよりお安いですし、色も絶妙で、ひとつのものを使いつづけるよい方法だと思っています」
アイデア_4
庭のハーブでチンキを手づくり。市販の基礎化粧品いらず
ハーブをアルコールに漬け、成分を抽出するチンキづくりに庭のハーブが活躍。
ミモザの花が咲き「何かに使えないか」と調べたら肌の弾力を回復する効能が期待できると知り、チンキに精製水とグリセリンを足して化粧水に。
ローズマリーのチンキは精製水で希釈してヘアトニックに。
「ドクダミは花が咲いたら虫よけスプレーに」
<撮影/近藤沙菜 構成・文/吉田奈央>
中村暁野(なかむら・あきの)
都内の生活を経て2017年から神奈川・藤野町の里山へ移住。夫、12歳の娘、6歳の息子、犬と暮らす。“家族と暮らし”をテーマに執筆活動を行い、著書『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)を上梓。雑誌『家族と一年誌 家族』も不定期刊行。サステナブルな商品を扱う「家族と一年商店」を営む。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです