• 予約の取れない漢方家・櫻井大典先生に教わる“心の養生法”。現代人の日頃の小さな不調に中医学と漢方の視点から向き合います。『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)より、「ささいなことでも心配になる不安」についての解説を紹介します。

    「理由なくいつもビクビクしてしまいます。些細なことでも心配になり、落ち着きません」

    漠然と将来のことが不安になって眠れなくなったり、起こってもいない天災や不慮の事故を心配しだしたり、何か特別な出来事が身近にあったわけでもないのに、日頃から警戒心が強く、ビクビクしながら過ごしているように思います。

    どっしりと落ち着いていたいのですが、どうしたらよいでしょうか?

    「胆(たん)」が弱っていると、必要以上にビクビクします

    これはまさに「胆寒(たんかん)」という、六腑の「胆」が弱っている可能性が高いです。「胆」という六腑は、中医学では決断を司る場所とされていて、ダメージを受けるとビクビクして、恐れが生じやすくなると考えます。

    気分の落ち込みが激しい、不安感が強い、必要以上に怖がる、決断に迷う、などの精神状態は、まず「胆寒」を疑ってみてください。

    さて、六腑というのは、食べものを食べ、消化・吸収し、不要なものは体外へ排出するという一連の流れにおいて、食べものの通る“管”です。いわば食べものの通り道で、西洋医学で言うところの、消化管。

    つまり、「胆」という六腑の一つが弱っているということは、何かを食べても、消化・吸収するための一連の流れがスムーズにいかないうえ、食べものの消化・吸収の働きを担う「脾」へ負担をかけてしまいます。

    すると、せっかく良質な食事を摂っても、体内に吸収されない。人が活動するために必要な「気」や精神を安定させる作用のある「血」もつくれなくなります。

    五臓と六腑は、それぞれ密接に関連し合っていますが、「胆」の場合は五臓の「肝(かん)」と表裏一体の関係にあります

    「肝」がいじめられれば、「胆」の機能も低下しますし、その逆も然り。互いに連携を図りながら機能しているため、「胆」が弱っていれば、自ずと「肝」の働きも鈍くなります。

    逆に言えば、「肝」が弱っているために「胆」がダメージを受け、今回のように不安感が強くなってしまっている可能性もあります。

    「胆寒」には、まずおかゆ

    なぜ「胆寒」になってしまったのかは、詳しく聞いてみないことにはわかりませんが、「胆寒」の症状が見られる場合は、まず“正しい食事”をするというのが一番の養生です。

    “正しい食事”とはすなわち、あっさりとした、温かい食事を、少なく食べる、こと。とくに、消化に関わる臓器や器官がダメージを受けているので、まずは食事をおかゆにして、それらの機能を十分に回復させることが手っ取り早いでしょう。

    養生食としてのおかゆは、本来であれば2時間ほど弱火でじっくり煮て、米の粒が完全にはじけた状態のものを指します。

    そのぐらい煮崩れている状態だと、噛む力も弱くなるぐらい体が弱っていて、咀嚼できずに飲み込んでしまったとしても、体は無理なく吸収できるからです。

    ただ、普段の家庭生活でとなると、2時間を捻出するのはなかなか難しいと思いますから、その場合は40分を目安にしてください。

    薄味を心がければ、梅干しを入れたり、出汁で炊いたり、中華がゆのような風味にしたり、好きな味に調味してもらって構いません。

    ひどく弱っている場合は、具材は入れない方がよいですが、そこまででなければ、白菜やチンゲン菜などの野菜を加えてもよいですし、さらに元気になっていたら、鶏肉などのお肉を加えるのもよし。ちなみに、おかゆは米から炊くほうがおすすめです。

    雑炊はおかゆではありません

    一つ注意しておきたいのは、おかゆと、雑炊やおじや、お茶漬けは別物ということ。これらは単純に水分が増えた米で、米粒のままサラサラと飲み込むように食べることができますよね?

    噛み砕かれていない米を消化・吸収する体の負担は、相当なもの。むしろよく噛んで食べる白米よりも、臓器が消化・吸収するのに時間も負担もかかり、せっかく食べても体に吸収されない可能性すらあります。

    本記事は『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)からの抜粋です

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    X(旧Twitter)での発信が人気を集め、予約の取れない漢方家と評判の櫻井大典さんが「不眠」「不安」「イライラ」などの不調を中医学と漢方の視点から解説。ひとつひとつの悩みに対して、ときに自身の体験談を絡めながら丁寧に向き合います。生活習慣における対処法から、効果が期待できる漢方食材の一覧表まで役立つ情報が満載です。



    櫻井大典(さくらい だいすけ)
    漢方コンサルタント、国際中医相談員、日本中医薬研究会会員。漢方薬局の家に生まれ、幼少の頃から漢方薬に慣れ親しみながら、北海道の自然の中で育つ。カリフォルニア州立大学へ進学し、心理学や代替医療を学ぶ。帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学び、中国・首都医科大学附属北京中医医院、雲南省中医医院での研修を経て、国際中医専門員A級資格を取得。現在は、電話およびSkypeで漢方相談にのっているほか、講演や書籍、雑誌、またX(旧Twitter)やnoteを通じ、現代に合った実践しやすい養生法を幅広く発信。Xのフォロワー数は18万人を超え、より多くの人々に中医学の知恵をやさしく、わかりやすく伝え続けている。
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