(『天然生活』2021年7月号掲載)
捨てずによみがえらせる暮らしの知恵
一閑張り(いっかんばり)とは、竹製のざるやかごなどに和紙を張り重ねる技法のこと。
日本で約400年前に始まったとされ、暮らしの道具を長く使う技として役立てられてきました。
仕上げには柿渋が塗られ、強度や防水性、防腐効果も高まるうえ、驚くほど軽いのも特徴。
古くなったものに新たな表情を添えることができると、近年その知恵が見直されています。
「一閑張り」のつくり方
のりのベタつきが気になる方は、テーブルに新聞紙を敷いてどうぞ。
材料
● ざるやかごなどの竹製品 |
● 下張り用 和紙(半紙・障子紙など) |
● 上張り用 和紙(半紙・障子紙・千代紙など、化学繊維の入っていないもの)または布 |
道具
● 柿渋(*写真左上のボトル) |
● でんぷんのり |
● 木工用接着剤 |
● はけ |
● スポンジ |
● のり台 |
下準備
・でんぷんのりに、とろりとするまで水を加え、木工用接着剤を20〜30%程度足して混ぜ合わせておく。※天ぷら衣のようなとろみをめやすに。
・柿渋と水を1:2の割合で合わせておく。
Step1 白い和紙を張る「下張り」
1 和紙を「水切り」で長方形に切る。和紙を台の上に広げ、切りたい場所に定規を置いて水をつけた筆や歯ブラシなどでなぞる。
2 定規を押さえながら紙を引き、水の跡に添って切る。水切りをせず、適宜手でちぎっても可。
3 切った紙を手でよくもんで、やわらかくして竹になじみやすくする。
4 合わせておいたのりをはけに取り、切った紙に塗る。内側から外側に向かって、繊維の先までのりがつくように。
5 4の和紙を、のりが乾かないうちにざるに張る。まずはざるのふちから。
6 スポンジを使い、上から押さえて空気を抜きながらざるの網目に密着させるように張っていく。
7 2枚張ったところ。放射状に、紙と紙が1〜2割重なるようにぐるりと張っていく。多少のしわは気にせず、おおらかに。
8 全体にすき間なく張れたら、下張りの完成。天日にさらしてのりを乾かしてから、上張りを行う。
〈撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子〉
神戸千代子(ごうど・ちよこ)
長野県大町市生まれ。約40年間薬局を営んだのち、2018年に作品づくりと集いの場「ゆいせきや」をオープン。一閑張り教室を主宰するほか、作品の販売も行っている。ゆいせきや
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです