家具と同様、家電、料理道具も軽いものにシフト
日々の食事は、さっと作れるものがほとんどです。時間をかけて作る時もありますが、多くの場合、その時にいただきたいものを、食べ切れる量、時間をかけず作っています。
料理をする時、いつからか軽い調理器具・道具を選ぶようになりました。「今日は、煮込み料理を」という時は、重いナベを「えいっ」と取りだし使うこともありますが、年々その頻度は、少なくなっています。また、取りだす際は、こころの中で「気をつけて」と自分に声をかけるようになりました。うっかり落としてケガをしたり、何かを割ったりしないようにするためです。
齢を重ねていくなかで、重いものや大きなものは、いつしか軽くコンパクトなものに代わっていきます。家具、電化製品。調理器具・道具に関してもそれは例外ではありません。
以前は毎日のように難なく使っていた物も、年々、軽くコンパクトなものを検討しはじめます。年齢だけでなく、家族形態や食生活そのものが変化していく年代にとり、使う物が変わっていくのは、自然なことだと感じています。
鍋は特別。かつての料理やそれを囲む人が浮かぶ
でも、どうしてか、ナベに関しては、抗する気持ちが少しあるのです。家具や家電に比べサイズがちいさいというのもありますが、思いがまた別のところにあるのかもしれません。より自分に近い物として存在しているというのでしょうか。
手にすると、かつて作っていた料理がうかんできます。それと共に、その時いっしょにいた人、交わされた言葉、旬の食材、その季節の移りゆく様、そんなことまで思い出します。
ひとりでできなくなっていくことが増えてくなかで「無理をしない」は、大切です。「重い」ということも、人によっては負担になる場合があります。その時、たのしさや思いが上回るのなら、それはまだ負担ではないのでしょう。
そうは言っても様々なことを見直す機会は、そう遠くない時期に訪れます。「重い」「危ない」「ほとんど使わない」という場合は、1度、持ちつづけるか検討してみてもいいと思います。
答えがでない時は、箇条書きにしてみるとわかりやすいですよ。いいところ、すきなところ、不便なところなどを書き出すと、どうすればいいか答えがわかる時があります。
調理道具や器具は、日々の食事を手伝ってくれるものです。器具・道具、家電、食器。それらを俯瞰で見つめ、今の自分、これからの自分の暮らしに「負担なく」「たのしい」「大切」を中心に見直してみる。60歳前は、10年後にはできないことも、かろやかにできる年齢です。変化に合わせ様々なことを検討し、再構築していくのは、キッチン内でも同じです。
60歳までのメモ
1 キッチンで使わないもの、使う回数が減っているものを考えてみる
2 「危ない」となんとなく感じているものを挙げてみる
3 置き場所としてスペースを取りすぎていないか見る
4 これからも使う、使わない、とりあえず置いておく、か決める
5 使ってくれる方がいたらきれいにして渡す
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19
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