• 自分は何が好きなのか、どうあることが自分の幸せなのか。一人で考えると行き詰まったり、出口がわからなくてつらくなったりするものです。でも、誰かと一緒に「対話」をして考えを深めれば、思いもよらない明日が見えてくるかもしれません。全国各地でさまざまな世代の人たちと「対話」を行う、哲学研究者の永井玲衣さんに、「対話」の面白さについてお聞きしました。
    (別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39掲載)

    ふだんの会話のなかにある、哲学的な問い

    子どもたちから日々発せられる「何で? どうして?」という素朴な疑問や、夫婦で話をしているときの「心地よい暮らしっていったいどういうことだろう?」という率直な想い。

    ふだんの何気ない会話のなかで、私たちはとても哲学的な問いを立てています。

    哲学は専門的な学問ではなく、そもそも暮らしのなかにあるもの。何でだろう、不思議だな、モヤモヤするということに立ち止まって考えることです。

    親子や夫婦、友人の間では悩みを聴いたり、相談をすることが多いなか、あえて「聴き合う」時間をつくり、お互いの話を聴き合って一緒に考え、モヤモヤを深めていくのが、私の提案する「対話」です。

    画像: ふだんの会話のなかにある、哲学的な問い

    とはいえ、いきなり「対話をしよう」といっても、できないもの。明確な課題がない限り、私たちは聴き合いをすることがなかなか難しいんです。

    でももっと普遍的で、いますぐには答えが出ないようなモヤモヤとした問いなら、その問いには関係のない人がいないので、みんな自分のこととして話せるんですよね。

    普遍的な問いについて話しているつもりが、実は自分がすごく困っていることを話せていたということも多いんです。

    対話はその問いの下に、参加した人が対等になれるのがいいところ。肩書きを抜きに、人間に戻っていく作業なので、その相手との関係性も変わってくると思います。

    「対話」の3つの魅力

    01_考えることはひとりではできない

    会社に向かいながら「仕事をするってどういうことなんだろう?」と疑問に思ったり、「幸せって何だろう?」とわからなくなったり。

    そんな人生の根源的なことを考えてみたくなったときには、他者が必要です。ひとりで考えるのはしんどいので、みんなで考えてみましょう。モヤモヤを深めていくと、自分の本音が見えてきます。

    画像: 01_考えることはひとりではできない

    02_問うことで、問題から自分を引きはがす

    ひとりで考えていると、どんどんループにハマってしまい、どこに出口があるかわからなくなることも。「何で?」と問うことは、実はその問題から自分を引きはがす試みでもあります。

    苦しんでいるときは何に悩んでいるか、わかっていないことが多いもの。漠然としたモヤモヤを客観的に見ると、どんなものかを確認できます。

    03_対話で自分自身と向き合う

    急いで正解を出すことが目的ではなく、わからないことを前に人々と一緒にもがくことで、ちゃんと悩んだり考えられるのが、対話の魅力。

    わかっていたつもりのことが、他者に問いかけられることによって初めて考えさせられます。思わぬことがつらつらと口から出て、自分はこんなことを考えていたのかと、気がつくことができるんです。

    〈構成・文/赤木真弓〉

    本記事は別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39からの抜粋です

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    一冊を通してのテーマは、「大事なことをひとつだけ決める」。

    家事を全部がんばると、長続きしなかったり、途中で疲れてしまったり。 そんなときは、これだけは譲れない、という一番大事なことをひとつだけ見つけてみるのはいかがでしょう?

    ただし、「ひとつだけ」というところが難しい! 「ひとつ」をチョイスするということは、ほかを諦めるということです。 捨て去る勇気を持ったとき、 どうしても手放せない確かなものがきらりと輝きはじめます。

    本書では、紆余曲折しながら、暮らしのなかの大事なことをひとつだけ決めた12人を取材。 その結果手に入れた、無理せずラクに暮らしを回していくための収納と段取りの仕組みづくりを紹介しています。

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    永井玲衣(ながい・れい)
    哲学研究者。学校・企業・寺社・美術館・自治体などで、人々と考え合う場である哲学対話を幅広く行う。Gotch主宰のムーブメント「D2021」などでも活動。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)、連載に『群像』での「世界の適切な保存」(講談社)ほか多数。第17回「わたくし、つまりNobody賞」受賞。詩と植物園と念入りな散歩が好き。

    ※ 記事中の情報は取材時のものです



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