(『天然生活』2021年9月号掲載)
お嫁さんならではのやさしい気遣いを感じて
「とはいえ、真佑も私に対して思うことはきっといろいろあると思いますよ」と話すウーさん。
「ただ、彼女も指摘したりはしません。前にスマートフォンのケースを買いに行きたいっていったら『じゃあ一緒に行きましょう』って、車を運転してお店に連れて行ってくれたの。
でも寒いなか、長時間お店の外に並んで、結局買わずに帰ってきた。あとから思うと、わざわざお店に行かなくてもインターネットで探してボタンを押せば買えるじゃない? でもそうはいわない。
私のやり方に口出しせず、つきあってくれるんですよ。そこはお嫁さんならではの気遣いなのかもしれませんね」
ぽんぽんと小気味よくいいたいことをいうウーさんと、笑顔でそれを受け止める真佑さん。
「この子は肝がすわってるんです。私の話を受け流すこともわりと多いのよ。でもそれくらいでいい。私のいうことにいちいち萎縮していたら仕事もできないでしょう」
そう笑うウーさんの話を聞いていた真佑さんが、こういいました。
「でも先生は、本当に私にいうべきこと、注意すべきことは、気を遣ってていねいに話してくださる。だからこそ、ふだんは受け流すことができるんです」
じっくり向き合って話したことが、今後の道しるべに
真佑さんがウーさんのもとで働く前に2回ほど、ふたりでじっくり向き合って、話す機会があったそうです。
「仕事のことはもちろん、家族としての目標などを話しました。目標? 一番は息子が“大きく”なるようにみんなで支えることですね。真佑にも、息子と結婚してよかったと思ってもらいたいですから」
このときのウーさんの真剣な思いは、真佑さんにもしっかり伝わったようです。
「今後、どんなふうに歩んでいくか、そのための道しるべになりました。先生の考えていることを聞けてよかったなと思っています」
〈撮影/鈴木正美 取材・文/嶌 陽子〉
ウー・ウェン(うー・うぇん)
中国・北京で生まれ育つ。1990年に来日。母から受け継いだ家庭料理が評判となり料理研究家に。著書に『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)、『料理の意味とその手立て』(タブレ)など。
インスタグラム:
@wuwen_cookingsalon
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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