(『天然生活』2021年9月号掲載)
料理研究家のウー・ウェンさんの姑としての心がけ
長男の結婚とともに新しい家族ができたという、人気料理研究家のウー・ウェンさん。
お嫁さんの名前は真佑(まゆ)さん。現在ウーさんの事務所でスタッフとして働いています。
前半の記事はこちら。
「縁あって家族になった人とは、できるだけよい関係をつくり、理解し合っていきたい」というウーさんに、姑としての心がけを伺いました。
ウーさんの姑修業心がけ
1 いいたいことはお互いにためずにいう。
2 自分と違う点ではなく、よい点を見つける。
3 お互いを尊重し、愛情をもってつきあう。
1.いいたいことはお互いにためずにいう
それぞれまったく違う世界で生きてきて、最近家族になったばかり。コミュニケーションの難しさや気持ちのずれを感じたことはないのでしょうか。
「思ったことはためないでその日のうちにいう。お互いにそれができているから、やりづらいと思ったことはないですね」
そう口をそろえるふたり。もうひとつ、ウーさんが心に決めていることがあります。
2.自分と違う点ではなく、よい点を見つける。
「指摘したくなることはたくさんありますよ。でも、自分の好みの押し付けになるようなことはいいません。
どうせなら、自分と違う点に目を向けるのではなく、自分との接点やよい点を探したほうがいいじゃない。探そうと思えばいっぱいあるものなのよ」
その例として、笑いながら話してくれたのが、「紅茶の話」です。
「私はお茶が大好きだけれど、中国茶がメインで、紅茶はあまり詳しくない。真佑は紅茶好きなので、あるとき淹れてって頼んだんです。
そうしたら茶葉をびっくりするくらいたくさん使うし、二煎目は渋みが出るからといって、一度淹れたらすぐに茶葉を捨ててしまう。
なんてもったいないことをするのって思ったんだけど、飲んでみたらものすごくおいしくて。『私がいままで紅茶を淹れてもなぜかおいしくなかった理由はここにあったんだ!』って思ったの。
人ってどうしても、茶葉を捨ててしまうところに目がいってしまうでしょう。でもこんなにおいしいお茶が飲めるんだもの、そこは見ないようにしているんです。最近は、紅茶を飲みたいときは真佑に淹れてって頼むようにしています」
3.お互いを尊重し、愛情をもってつきあう。
茶葉を少しずつ大事に使うこと、とびきりおいしいお茶を淹れること。どちらかが間違っているということではなく、単に視点が違うだけです。
ひとりひとり、異なる視点をもっているからこそ、他人と一緒に過ごすことは面白い。
ウーさんの考え方は、嫁と姑だけでなく、パートナーや友人同士、あるいは同じ社会で生きる人同士など、あらゆる人間関係に共通することのように思えます。
「お互いを尊敬する。それが愛をもってつきあうってことなんじゃないですか。
それにね、自分とは違うやり方や考え方を知ることは、新しい発見があるということ。そのたびに、私もまだまだ経験が足りないなあって思うんです」
真佑さんも、毎日ウーさんの料理をつくる姿や仕事をする姿を見ながら「自分にはないもの、いままで知らなかったことを日々学んでいる」といいます。
〈撮影/鈴木正美 取材・文/嶌 陽子〉
ウー・ウェン(うー・うぇん)
中国・北京で生まれ育つ。1990年に来日。母から受け継いだ家庭料理が評判となり料理研究家に。著書に『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)、『料理の意味とその手立て』(タブレ)など。
インスタグラム:
@wuwen_cookingsalon
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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