• 物価高騰が続くいまこそ、日々を見直す好機。これからの暮らしのヒントを料理家の横山タカ子さんにお聞きしました。今回は、横山さんの「使わない、工夫のある暮らし」について伺います。
    (『天然生活』2023年6月号掲載)

    こだわりがゆきとどいた横山さんの選択

    「私、意外と疑り深いところがあるのよ」そういって笑う、料理家の横山タカ子さん。なんの話かといえば、それは暮らしまわりの道具選びのこと。

    「しゃもじもまな板も、お鍋でさえ、使っているうちに少しずつ減っていくもの。つまり、私たちの口にも入っているということです。近年に現れた素材は、どうも安心できなくて

    横山さんが台所を切り盛りするようになった1970年代といえば、プラスチック製品が台頭し、昔ながらの生活道具が追いやられていった時代。

    「プラスチック製の保存容器は、ずいぶん流行しましたね。でも私は、不思議なほど興味がもてなかったの。ただし、古いものでなくては、というわけではなく、『みつろうラップ』など、安心できる自然素材のものなら喜んで取り入れています」

    また、かねてより守り続けているのが洗剤の選び方。

    「それこそ結婚したばかりだった数十年前、合成洗剤で泡だらけの川や、死んでしまった魚たちの様子が報道された当時から、自然のなかで分解される無添加の石けんや重曹しか使っていません

    油汚れは古い布でふいたり、お皿の上に葉を敷くなど、洗剤そのものを使わない工夫も。

    「あれこれ洗剤を置かないから台所もすっきり。お財布にもやさしいですね」

    こだわりがゆきとどいた横山さんの選択は、電化製品にも。たとえば食品用ラップを使わないだけでなく、電子レンジも使いません。代わりに用意しているのは、サイズ違いでそろえたせいろ。

    「ラップのごみも出ず、温める時間も意外なほどかかりませんよ」

    コロナ禍の影響で来客が減ったことをきっかけに、食洗機も撤去しました。

    「大人のふたり暮らしなら、手洗いで十分。あいたスペースは食器棚を置いてしっかり役立っています」

    使わない
    合成洗剤を使わない

    画像: 以前は手づくりしていた廃油石けん、近年は福祉施設製造の品を愛用

    以前は手づくりしていた廃油石けん、近年は福祉施設製造の品を愛用

    結婚当時からいままでずっと「合成洗剤は買ったことがありません」と横山さん。

    キッチンには廃油石けんと、使いやすく小びんに入れた重曹だけが並んでいます。

    「お茶を飲んだくらいの茶碗なら石けんさえ使いません、汚れが落ちれば十分ですから。茶しぶなどが気になってきたら、まとめて重曹につけています」

    画像: 使用後のたわしはすぐ汚れを落とし、食器の水切りかごにかけて清潔に

    使用後のたわしはすぐ汚れを落とし、食器の水切りかごにかけて清潔に

    画像: ほとんどの食器洗いは「あみたわし」で。「生地が丈夫で長持ちです」

    ほとんどの食器洗いは「あみたわし」で。「生地が丈夫で長持ちです」

    使わない
    ラップを使わない

    画像: 韓国で求めたポジャギの「はい張」をお手本に、手縫いしたお気に入り

    韓国で求めたポジャギの「はい張」をお手本に、手縫いしたお気に入り

    「石油製品であり、一度きりの使い捨てになってしまう食品用ラップも極力使わないように」と、横山さんが取り入れているのが、アジアの雑貨類。

    「アジアを旅していると、日本にもかつてあったような、素敵な『はい張』に出合うんです」

    画像: 使わない ラップを使わない

    数年前からは、お気に入りの布を用いた手づくりの「みつろうラップ」も活躍中。

    画像: 天然の抗菌作用を生かした「みつろうラップ」もサイズ違いで用意

    天然の抗菌作用を生かした「みつろうラップ」もサイズ違いで用意



    <撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子>

    横山タカ子(よこやま・たかこ)
    長野県大町市生まれ、長野市在住。信州各地を訪ね集めた保存食・行事食や、旬を生かし塩分を抑えた「適塩」の健康食レシピも好評。失敗しない梅干し「さしす漬け」をはじめとする、梅の保存食づくり40年の集大成的レシピ集『私の梅仕事』(扶桑社)、『四季を味わう 私の「木の実」料理』(扶桑社)も好評発売中。「趣味は暮らし」とし、和のしつらいや着物の着こなしにもファンが多い。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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