(『天然生活』2023年6月号掲載)
「これがいい」からこそ、無理なく、楽しく続く
むだなく、美しく暮らす知恵にあふれた横山さんの生活。その原点には実の母、そして明治生まれの義母からの影響もあると話します。
「故郷は水が豊かな土地ですが、母は洗い水も最小限しか使いません。食事の残りも家畜に与えることで、ただの生ごみにはしませんでした。節約だけでなく、『それでこそ暮らし』という凛とした姿勢があったのだと思います。義母もまた、始末のよい人で。ふたりの姿は、私のなかにいまも生きています」
受け継いだものから新しい挑戦まで。
「ねばならない」ではなく「これがいい」の積み重ねが横山さんの日々を豊かに彩っています。
工夫
料理道具は天然素材を長く使う
竹のかごにガラスの器、木のへらやまな板など美しい道具が並ぶ、横山さんの台所。
「料理道具は、何を選ぶかによって味さえ変わる『もうひとつの調味料』だと思っています。職人が手がけた天然素材のものは、信頼が置けますね。少しのコツと手入れで傷むことなく、唯一無二の相棒に育つのも、昔ながらの道具の魅力です」
工夫
すだれや植物で日よけ
季節の移ろいに合わせてしつらいを変えることで、目に美しいだけでなく、光熱費の節約にも。
「わが家はよく日が差すので、これからの季節にすだれがあるとないのでは大違い。暑くなったらほぼ一日中下ろしておきます。客間の窓辺は、庭のつる草が天然の日よけになってくれました。畳に落ちる葉の影もいとおしいですね」
工夫
ごはんとじゃがいもを一緒に炊く
「嫁いできた当初、これを見たときは衝撃でした」という、ごはんとじゃがいもをいっしょに炊く知恵。
「最初は受け入れがたかったけれど、いつしか私も取り入れるように。エネルギーを効率よく使えるだけでなく、とっさの『もう一品』にも役立ちます。溶け出したでんぷんがまわるのか、ごはんも甘くなるように感じるんです」
<撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
長野県大町市生まれ、長野市在住。信州各地を訪ね集めた保存食・行事食や、旬を生かし塩分を抑えた「適塩」の健康食レシピも好評。失敗しない梅干し「さしす漬け」をはじめとする、梅の保存食づくり40年の集大成的レシピ集『私の梅仕事』(扶桑社)、『四季を味わう 私の「木の実」料理』(扶桑社)も好評発売中。「趣味は暮らし」とし、和のしつらいや着物の着こなしにもファンが多い。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです