バランスより大切にしたい、自分の「満足感」
食事は、さっと作れるものばかりです。品数も多くなく、一汁一菜またはワンプレートでいいと思うようになりました。以前は「もう一品」「バランスよく」と考えていましたが、いまは「気持ちよくいただける」を大切にしています。
日々の食事作りが、大変な時期があります。体調がよくない時、仕事が立てこんでいる時。家族の病気や介護、(わたしは経験がありませんが)子育ての時など。そもそも、買い物をする時間がないこともあります。だからと言って、外に食事に行く気力もなく、売っているお惣菜にも手が伸びない。「誰か作ってくれないかなあ」と、こころから思うのです。
そういう時でも、頭の片すみには「ちゃんとしたものを食べなければ」「作らなければ」という思いがあります。それがいい方向へいくこともありますが、負荷になることもあり「どうして、わたしだけ」と、パートナーや周りに対する不満につながっていくこともあります。
食事は、何らかのいのちをいただくことです。日本独特の言葉「いただきます」。食事をつくる過程、食前、食中、食後、その全てにおいて、不機嫌にならない。それが、本当の意味での「いただきます」ではないか、とある時から思うようになりました。
もし、そうなら、自分にとっての負担や不機嫌になりそうな原因や理由をなくすことが一番です。そうしないと、いつまでも、不機嫌や不満がつきまといます。
気持ちのいい「いただきます」のために「買う日」「作る日」を明確に
気持ちよくかろやかに過ごしていく。それが、60代を迎えるわたしの課題です。それは食に関しても同じ。自分なりの「いただきます」を大切に、かろやかに気持ちよくを考えた時、不機嫌になるようなことは「しないように」と思うようになりました。
自分が食べたいものを一品つくればいい。作れない時や負担に感じる時は、後ろめたさを感じることなく外でいただく。購入する。作ることも、作らないことも、ともに快くできたら。
朝──。その日の予定を見て「やることリスト」を書きだします。その時いっしょに「今日は何を食べよう」と考えます。外に行く時間があれば「あそこのお店でいただこう」と思います。「今日はつかれそう」と予想できる日は「食べたいものを買って帰ろう」にします。
冷蔵庫のなかのものを思い浮かべ「買い足すリスト」を思うこともありますし「今日は作ろう」という時は「買い物リスト」を作ります。
不思議なのですが、あれも、これも、と作っていた頃に比べ、考え方、作り方を変えた今の方が、気持ちのバランスも含め、満足度が高いのです。
60歳までのメモ
1 毎日の食事に負担がないか再考してみる。負担を感じたら何が原因か考える
2 気持ちと体のバランスをとる
3 外食やテイクアウト、冷凍食品など、気に入ったものを見つけうまく利用する
4 買いすぎ、作りすぎなどで破棄がある場合は見直す
5 「食べる楽しみ」「満足感」を大切にする
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19
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