(『天然生活』2021年9月号掲載)
料理上手の母から渡された、思い出の道具の数々
記憶を呼び覚ます、カクテル用のメジャーカップ
つい先日、家の片づけをしていた母親から譲られた、カクテル用のメジャーカップ。
「子どものころ、母がシェーカーと一緒に使ってカクテルをつくっていた記憶があります。
シェーカーをシャカシャカと振っていた姿をいまでも覚えています。
その姿に憧れて、私も姉と一緒にこのシェーカーでミルクセーキをつくっていました」
家族全員おそろいの椅子
家族で使っていたダイニングチェア。当時は茶色の革張りだったが、譲り受けてから布張りに。
「小さいころは私だけ子ども用の椅子を使っていたのですが、小学1年生になったころ、買い足しに連れて行ってくれました。
父の車で買いに行き、帰りは後部座席の私の隣に椅子を乗せて帰ったことをいまでも鮮明に覚えています」
お土産のライヨール村のナイフ
「ステーキやポークソテーなど、肉好きの伊藤家にとって、よく切れる肉用ナイフはなくてはならいものです」。
見た目も切れ味も素晴らしい、フランス南部のライヨール村のナイフ。
「いつか譲ってね」と何度も頼んでいたところ、20年ほど前に両親がフランス旅行に行った際、同じものをお土産に買ってきてくれたそうです。
フランスのお土産のナイフは木箱に収められている姿もきれい。使用後はやさしく洗い、乾いた布でふいて大事にしまいます。
お手伝いの思い出とすり鉢
どっしりとしていて使い勝手のいいすり鉢。母親がこれでごまをすり、ごまあえなどをよくつくってくれたそうです。
「下に固く絞ったふきんを敷いてこのすり鉢を置き、ごりごりといい音を立ててごまをすっていたのをよく覚えています。
『ちょっと持っていて』と頼まれて、すり鉢を支えるお手伝いをした思い出もありますね」
食卓に上ったシルバーサーバー
大ぶりで、持ったときにずしりとくる重量感のあるサーバー。
「母は忘れているのですが、たしかフランス旅行で買ってきたような気がします。
実家にいたころは、父の知人がつくったという大皿に山盛りのグリーンサラダを盛ったとき、一緒に登場していました。わが家でも活躍中。スプーンだけでも取り分け用に便利です」
家族の好物はル・クルーゼの鍋で
父親がこってりした料理が好きだったため、子どものころは食卓に洋風料理がよく登場。
「母がこれでミートボール入りのミートソースやロールキャベツ、シチューなどをつくってくれました。コトコト火にかかっていた記憶があります。
15年ほど前に受け継いでから、私もよく使っています。愛着があるのでつい手に取るようです」
母愛用のクッキーとマドレーヌの型
「私が子どものころ、おやつはほとんどが母の手づくり。
いまのように気の利いたおいしいお菓子が売っていなかったからと母はいいますが、その記憶は私にとってかけがえのないものです。
なかでもうれしかったのは、クッキーの型抜きのお手伝いをさせてもらったこと」。
譲り受けた型は、大切な思い出としてしまっています。
* * *
▼「家族から受け継いだもの」そのほかの記事はこちら▼
〈撮影/伊藤まさこ、山田耕司 取材・文/嶌 陽子〉
伊藤まさこ(いとう・まさこ)
料理や雑貨など暮らしまわりのスタイリストとして雑誌や書籍で活躍。ウェブサイト「ほぼ日」とともにオンラインショップ「weeksdays」を運営中。伊藤さんの著書に、母の料理と思い出について綴った『母のレシピノートから』(ちくま文庫)がある。現在、電子版も配信中。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
* * *
天然生活2024年9月号では「愛にあふれた、やさしい暮らし」を特集しています。
大切なだれかを想って生まれた気持ちは、まわりをいやし、自分を満たし、幸せな日々を連れてきます。
ぜひご覧いただけましたら幸いです。
天然生活 2024年9月号
https://shop.tennenseikatsu.jp/items/88709969