• 年齢を重ねてからの転倒は、骨折したり、外出することが怖くなったりと、大きな弊害が。今回は、リハビリテーション科医の安保雅博先生に「転ぶ可能性を減らせる環境づくり」のポイントを教わります。
    (『天然生活』2021年11月号掲載)

    外出中より“家の中”で起きやすい高齢者の転倒

    「転倒というと、すっ転ぶイメージがあるかもしれませんが、明確な定義はありません」

    そう語るのは、リハビリテーション科医として、多くの高齢者に寝たきり予防法を伝えてきた安保雅博さんです。

    「年齢を重ねることで起きる体の機能低下によって、歩いていてつまずいたり、立ち上がろうとして転んだり。日常の何気ない動作で転倒してしまうのです」

    実は、外出中より家の中で転ぶことのほうが多いので、高齢の家族がいる方は、転びにくい家の環境づくりも大切です。

    画像: 外出中より“家の中”で起きやすい高齢者の転倒

    転ばない環境づくりのポイント 01
    家では裸足、スリッパは使わない

    画像: 転ばない環境づくりのポイント 01 家では裸足、スリッパは使わない

    室内ではスリッパのようなつっかけや、ぞうりのような履物を履いている人が多いのでは? つまずきやすいですし、脱げないように歩行が不安定になったり、すり足になったりするため、転倒予防には裸足がおすすめ。

    足指をしっかり使えて、床の凹凸や傾きなどの情報を足の裏で受け取り、脳に伝えられるからです。

    とはいえ裸足だと足が冷えることも。その場合は5本指ソックスや、かかとまで包むタイプの室内ばきを履きましょう。

    ちょっとそこまでの外出にも、サンダルよりひものないスニーカータイプがおすすめです。

    転ばない環境づくりのポイント 02
    センサー付きの照明器具を付ける

    画像: 転ばない環境づくりのポイント 02 センサー付きの照明器具を付ける

    夜中にトイレに行こうとして転んでしまうことがよくあります。暗いと平衡感覚がつかめないからです。

    また、慣れている場所だから大丈夫と思っていても、年齢を重ねて足腰が弱っていたり、眠くてぼんやりしていたりすると、足元がおぼつかなくなります。

    対策としては、暗闇に目が慣れるまで、なんて思わずに、足元がよく見える照明を用意しましょう。

    人に反応する人感センサーや、周囲が暗くなると感知して明るくなる明暗センサー付きならば、スイッチを探しているあいだに転倒してしまうことも防げます。

    転ばない環境づくりのポイント 03
    手すり突っ張り棒を付ける

    画像: 転ばない環境づくりのポイント 03 手すりや突っ張り棒を付ける

    転倒する場所として実は多いのが、家の中。ベッドからの起き抜けにふらついてしまったり、トイレで用を足すために立ったり座ったりするときにも、転びやすくなっています。

    そこでいつでも体を支えられるように、手すりを付けましょう。手すりが難しければ、床から天井まで届く突っ張り棒を20本ほど用意し、突っ張り棒の間に棒を渡して手すりにしても

    ベッドトイレソファなどのそばに設置することで、立ちやすくなったり、寄りかかれたりするので体もラクですし、転倒を避ける役に立つはずです。

    転ばない環境づくりのポイント 04
    床にある余計なものを片づける

    画像: 転ばない環境づくりのポイント 04 床にある余計なものを片づける

    足元にものがあるとつまずきやすくなりますから、床にものはなるべく置かない、余計なものは片づけるようにしましょう。

    ベッドサイドのごみ箱のように、場所がはっきりと決まっておらず移動しやすいものや、届いた荷物のダンボールなどイレギュラーなものは、危険度大です。

    また、年齢を重ねて足が上がりづらくなると、玄関マットやキッチンマット、カーペットのような、ほんの数センチの段差でもつまずいてしまうことがあります。手が塞がっているとなおさらです。

    不安な場合は、マット類も片づけるといいでしょう。



    〈監修/安保雅博 イラスト/祖父江ヒロコ 取材・文/長谷川未緒〉

    安保雅博(あぼ・まさひろ)
    リハビリテーション科医、医学博士。東京慈恵会医科大学附属病院副院長。リハビリテーション科診療部長。脳卒中後遺症が専門。リハビリテーション治療のパイオニアとして、多くの高齢者に寝たきり予防法を伝えている。『慈恵医大リハビリ科式 健康寿命を延ばす 家トレ』(中山恭秀氏との共同監修/扶桑社)など著書多数。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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