(別冊天然生活『暮らしを育てる台所』より)
小さな自給自足を支える、“土と循環する台所”
高知で暮らしはじめた20年前から「小さな自給自足」を実践する早川さん。近くの畑で、たくさんの野菜や果樹を育て、鶏や日本ミツバチを飼っています。
「とりたての食材は生命力にあふれていて、そのまま食べても本当においしいんです。それに、たくさん収穫した梅で梅干しや梅酒をつくったり、野菜でおかずをつくったりするとき、畑と台所がつながったようで心からうれしくなります」
畑とつながる早川さんの台所は、土と循環する台所でもあります。
野菜の皮などの生ごみをシンクの上のホウロウのポットに入れて集め、堆肥をつくって畑にまいたり、鶏のエサにしたり。その栄養が野菜や果樹、卵を育み、また食べ物として体に還ってくるのです。
「土に還る循環のなかで生きると、体も心もすこやかでいられると気づきました。私がこの高知の山奥で暮らす理由は、そこにあります」
台所は「暮らしのまんなか」
日が陰ってきたころ、夕ごはんの支度に、みんなが台所に集まりました。この日のメインは餃子。弟子のひとり、中国出身のきょうさんがリーダーになって皮からつくります。取材陣も一緒に悪戦苦闘しながら、生地をこねてのばし、あんを包みます。
そうしてでき上がった餃子は、小麦が香るぷりぷりの皮から澄んだ肉汁がじゅわり。「皮から自分でつくったら、おいしくなるのよ」と、にこにこの早川さん。
「命のもとである食べ物とひとつになるのが台所。暮らしのまんなかの、一番大事な場所ですね」
〈撮影/河上展儀 取材・文/熊坂麻美〉
早川ユミ(はやかわ・ゆみ)
布作家。アジアの手紡ぎ、手織りの布で衣服をつくり、展覧会やワークショップを開催するほか、暮らしと食べ物にまつわる著書を多数執筆。近著に『種まきびとの絵日記はるなつあきふゆ 増補改訂版』(扶桑社)。