(『天然生活』2020年8月号掲載)
ものを厳選した暮らしに工夫が生まれます
65歳を過ぎたので、料理道具、食器、銀のカトラリーを若い方々に引き継いでいきます。
結婚祝いであろうが、海外旅行の思い出であろうが、これからずっと使っていける道具はそんなにはないのです。
でも、私がそうであったように、若い方にとっては大切に使われてきた道具を引き継げる出合いは幸運なこと。
身内にこだわらず、大切な知り合いに少しずつ贈っています。クリストフルのティースプーンは結婚祝いに。
ひと抱えもある英国製のマフィンボウルとサラダボウルは来客の多い岩手の牧場に。
旅先から自分宛に絵はがきを送る理由とは
たとえ日帰りの美術館であっても、旅の気分を味わうために自分宛てに絵はがきを送ります。
住所と名前だけをフリクションペンで書いて投函。届いたら文字は消して、切手と消印だけ残し、本の栞や買い物のメモ用紙にします。
電車の中で本を開いたときなどに消印を見て、しばしタイムスリップ。
自家製ワイン塩で食事を楽しむ
食塩60gと赤ワイン40gをとろ火でサラサラに煮詰め粗熱がとれたらびんに入れます。
湿気ないようにふたはコルク栓で。ステーキはこしょうだけで焼き、食べる際にめいめいでワイン塩をかけます。
もっとおいしくなるかとローズマリーを加えてみましたが大失敗。シンプルに赤ワインだけが美味です。
すき間時間で引き継ぐ準備を
30年前に友人から引き継ぎ、お礼状を出す際に使って来た封筒のシーリングスタンプ。
もうすぐ若い世代に引き継ぐつもりです。
海外旅行先で買ってきたシーリングワックス、溶かすためのスプーン、キャンドル、ワックスペーパー、銅板、マッチ、サンプルも添えて、ぴったりの箱に収めました。
<撮影・エッセイ/石黒智子 文/嶌 陽子>
石黒智子(いしぐろ・ともこ)
エッセイスト。書籍や雑誌などを通じて暮らしの工夫や道具の選び方を提案。著書に『60代 シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです