(『天然生活』2023年3月号掲載)
掃除は“いかに楽をするか”がテーマ
結婚して数十年、常に多忙な日々を送ってきた石黒智子さんにとって「いかに楽をして家の中をきれいにするか」は長年のテーマです。そのための最適な道具や方法は徹底的に探求します。
たとえば食器用水切りかごのカルキを落とす道具も、試してみたのはひとつやふたつではありません。
天然素材のブラシ、歯ブラシ、キッチンスポンジ、スチールたわし……。すぐ傷んでしまったり、汚れを落としきれなかったりなど、失敗も経験しながら、ようやくたどり着いたのが、いま愛用中の毛足が短いベジタブルブラシだといいます。
「道具をひとつ使ってみて、使いづらいところがあれば、次はそれを踏まえて選んでみる。そうやってアップデートしていくと、結果的に日々の掃除が楽になるんです」
この場所に最適だと思えば、本来は掃除道具ではないものでもかまいません。
さらに、モチベーションを上げるには見た目の美しさも大切。少しでも不便や不都合だと思ったり不快に感じたりするものを見逃さず、ときには自分の手を動かしながら、心身に負担をかけない方法を追求しています。
「思い立ったらきれいに」で負担を軽く
さらに、石黒さんの掃除術で特徴的なのが、ルーティンを決めないこと。天気や状況、気分によって掃除の内容や時間は変わります。
「寒い日に朝から掃除するのは辛いし、仕事を先に済ませたい日もあります。気になった場所だけ掃除したり、空いた時間に思いついたことをしたりするほうが私の場合は楽なんです。疲れるまでやらない、というのも大事。少しでも負担になると続かないですから」
決まり事をつくらないもうひとつの理由は、自分だけでなく夫も掃除をしているから。
お互いが自分のできるときにできることをするほうが、ストレスがありません。
「毎日することがたくさんあるので、ひとりで掃除を抱え込むのは無理。だからだれでもできるよう、道具もすぐわかる場所に収納しています。お互いに気づいた場所を掃除するのが基本ですが、どうしても頼みたい掃除がある場合は『掃除して』ではなく『寝室に掃除機をかけて』など、なるべく具体的に伝えるようにしています」
石黒さんの「掃除の習慣」
あまり決め事をつくらず、できることをできるときに。これが続けられる秘訣です。
〈毎日やること〉
・夜のトイレ掃除
〈雨の日にやること〉
・窓の内側の掃除をし、翌日に窓の外側の掃除をする
〈やらない心持ち〉
・掃除時間を決めない
・掃除内容を決めない
・やる人を決めない
・疲れるまでやらない
・気分が上がらない道具は使わない
〈撮影/杉能信介 取材・文/嶌 陽子〉
石黒智子(いしぐろ・ともこ)
雑誌や書籍を通じて収納、家事のアイデア、暮らしの工夫、道具の選び方などを独自の視点で発信。「亀の子スポンジ」など、台所用品の商品開発、商品評価の仕事でも活躍している。著書に『60歳からのほどよい暮らし』(PHP研究所)、『60代 シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです