(『天然生活』2021年12月号掲載)
立冬から立春には「腎」をいたわる食材を
東洋医学では、春は「青」(緑の葉野菜など)、夏は「赤」(トマトやスイカ)といった具合に、季節に積極的に食べるべき食材の色が示されていますが、冬は「黒」。
黒い食材以外にも、旬の食材などを意識して取り入れていくと、腎(じん)に精がチャージされていきます。
「肺や肝といった他の臓器の元気がないと、腎は自分を後回しにして精を分け与えてしまうんです。だから腎が元気になるには、実感するのに少し時間がかかります。手に入りやすい豚肉や山いも、黒ごまなどをコンスタントに食べるようにしましょう」
さらに立冬から年末にかけて、とくに食べるようにしたいのは、東洋医学では「陰(いん)」と呼ばれる「潤い」を補う食材です。陰は血液やリンパ液、肌や髪の潤いなど、人体にある有益な水分のこと。
「陰とは、お風呂を沸かすときのお湯のようなもの。潤いがないと、いくら厚着をしたり、温める食材を食べたりしても、体は温まらない。だから本格的な寒さが到来する前に、しっかり潤いをチャージしておく必要があるのです」
年明けからは本格的な寒さ対策を。長ねぎやにら、適度な香辛料を使って、体を温め、胃腸をいたわる料理を食べるようにします。
腎をいたわる食材 1
黒い食材や動物性タンパク質を積極的に
東洋医学で「腎によい」とされているのは、うなぎや牡蠣、黒豆、黒ごま、栗、黒米、黒きくらげといった「黒」の食材。うなぎやすっぽんを食べると「精がつく」といったりしますが、精とは腎に蓄えられている生命力のもとのこと。
また、黒い食材以外では、魚介類や豚肉、羊肉、レバーなど動物性タンパク質をしっかり摂り、きびしい寒さに備えます。
〈黒い食材〉
うなぎ、牡蠣、すっぽん、黒豆、黒ごま、くるみ、栗、干ししいたけ、黒米、黒きくらげ、ごぼう、うに、かつお、たちうお、海藻
〈黒以外の食材〉
山いも、豚肉、羊肉、えび、鯛、骨つき肉・魚、クコの実、カシューナッツ、松の実、ししゃも、すずき、さけ、ほたて、レバー、鹿肉、ブロッコリー、キャベツ
腎をいたわる食材 2
年末までは、体を潤す「陰」の食材を食べる
冬の初期に食べておきたいのは、「陰」と呼ばれる体に潤い(体液)をもたらす食材。いくら体を温める食材を食べても、食後すぐに冷えてしまうのは、この陰が足りてない証拠。
陰が豊富な状態とは、みずみずしくふっくらした赤ちゃんがイメージ。肌や髪、喉の乾燥が気になる人は、以下の食材をしっかり食べるようにしましょう。
〈陰を養う食材〉
山いも、大根、かぶ、ほうれんそう、にんじん、魚介類、豚肉、乳製品、卵
腎をいたわる食材 3
年明けには「体を温める食材」を食べる
寒さが一段ときびしくなる年明けから立春にかけては、体を温める素材を。
よく「体を温めるにはしょうがを」といわれていますが、生のしょうがは体表の血流がよくなり、カッカしますが、毛穴が開いて最終的にはかえって冷えることも。
冬の寒さにはしょうがよりも長ねぎ(の白い部分)を。風邪をひきやすい人は、毎日食べて。
〈体を温める食材〉
適度な香辛料(とうがらし、シナモン、こしょう、八角、山椒など)、にら、長ねぎ、青じそ、よもぎ、まぐろ、黒砂糖、酒、もち米
〈イラスト/松尾ミユキ 取材・文/田中のり子〉
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医学薬膳師。東京・青山の「源保堂鍼灸院」にて「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行っている。著書『お手軽気血ごはん』(文化出版局)が好評。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです