(『天然生活』2021年2月号掲載)
昔ながらの“和食”こそが薬膳
「薬膳」と聞くと、なんだか難しそうだしお金もかかりそう。
そんなふうに考えている方も多いのではないでしょうか。
「私が提唱する“和の薬膳”は、特別な食事ではありません。平安時代から続く和食の献立“一汁三菜”が基本で、手軽に始めることができますよ」
そう語るのは、東京薬膳研究所代表の武鈴子さん。長年、食養生の研究を続けてきたなかで、昔ながらの和食こそが薬膳であると気づいたそうです。
「中国発祥の薬膳には、“身土不二(しんどふに)”という考えがあります。その土地でその季節にとれた作物を食べると健康によいという意味です。人は自然に調和すれば、健やかに生きられるのです」
日本で暮らす人にとっては、季節ごとの旬の食材を使った和食が気候風土に合い、体を整える食事。そこに、食材それぞれのもつ性質や働きが加わります。
食材の働きを上手に組み合わせることで、日常の食事が薬膳となり、不調が改善されていくのだそうです。
食材選び・食べ合わせ次第で、ふだんの食事も薬膳に
薬膳の不安や疑問にお答え
高価な漢方薬が必要で、料理に手間がかかるの? そんな不安や疑問を、ここで解決。
薬膳の不安や疑問 その1
薬膳にはたくさんの特別な材料が必要?
→ 「家にある食材」で実践できます
中国では「薬食同源(やくしょくどうげん)」といわれ、食べ物が薬と同一に扱われています。
薬膳とは、日常の食事で健康を守るもの。それに対して漢方薬は、主に病気になってから治療に用いるものです。
身近な食材をよく知り、食べることこそが薬膳です。
薬膳の不安や疑問 その2
1食分の献立にはたくさんの品目が必要?
→ 数よりも質。季節の食品を積極的に
健康のために「1日に30品目食べましょう」などといわれますが、毎日続けるのはなかなか大変ですよね。
食品数を増やすことよりも大切なのは、旬の素材を食べること。季節の食材には、その時季に起きやすい不調を防ぐ力があります。
薬膳の不安や疑問 その3
家族の体質に合わせて別々の味付けの調理が必要?
→ 同じ料理でも、味付けで変化を
家族で食事をともにする場合、大事なのは“薄味にする”こと。
そして食卓に塩、味噌、こしょう、酢、梅干し、七味とうがらしなどを常備し、仕上げは各自で。
そのときに体が必要とする調味料を選べば、体質に合った食べ方ができます。
薬膳の不安や疑問 その4
冬の寒い時季には、生野菜のサラダはひかえるべき?
→ 旬の野菜なら、生で食べても大丈夫
薬膳では、生で食べるか火をとおすかよりも季節の変化を重視します。
冬にサラダを食べるなら、水分が多く体を冷やす作用のあるレタスやきゅうりはひかえて、かわりに冬野菜を。
にんじんや大根、春菊などは生で食べても体が温まります。
〈取材・文/河合知子 イラスト/霜田あゆ美〉
武鈴子(たけ・りんこ)
東京薬膳研究所代表。成人病研究所に勤務後、中国・四川省で薬膳理論を学ぶ。東洋医学と日本の気候風土、伝統料理を融合した「和食薬膳」を提唱。著書も多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです