(『天然生活』2021年2月号掲載)
昔ながらの“和食”こそが薬膳
「薬膳」と聞くと、なんだか難しそうだしお金もかかりそう。
そんなふうに考えている方も多いのではないでしょうか。
「私が提唱する“和の薬膳”は、特別な食事ではありません。平安時代から続く和食の献立“一汁三菜”が基本で、手軽に始めることができますよ」
そう語るのは、東京薬膳研究所代表の武鈴子さん。長年、食養生の研究を続けてきたなかで、昔ながらの和食こそが薬膳であると気づいたそうです。
「中国発祥の薬膳には、“身土不二(しんどふに)”という考えがあります。その土地でその季節にとれた作物を食べると健康によいという意味です。人は自然に調和すれば、健やかに生きられるのです」
薬膳の基本「五味調和」とは?
食材の分類「五味調和」を学んでいきましょう。
中国医学の原則のひとつに「五味五臓」があります。五味とは、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味を指す鹹味(かんみ)のこと。
それぞれの味が体のどの部位、器官に作用するのかを五角形で示した「五味五臓表」で確認しましょう。
「五味五臓表」について
食品を酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味の5つに分け、体のどの部分に影響があるかを示しています。
時計まわりの矢印は隣り合う器官にも働きかけて助ける「相生(そうせい)」を、点線の矢印は働きを弱める「相剋(そうこく)」を表します。
また、五味には春夏秋冬と、季節と季節の間のあわいの季節である土用が対応。
内臓や器官名はその時季にその部位にトラブルが起きやすいことを表しています。
薬膳の基本は五味調和です。この表をメモしておくと便利ですよ
五味をバランスよく食べることで、体全体の調子がよくなります。逆に偏りがあると、不調の原因になるそうです。
「五味のバランスは、甘味が70%。他の4つは、7.5%程度が目安です」
「酸味は苦味を、苦味は甘味を、と外側の矢印の順に働きを助けていくので“相生(そうせい)”と呼びます。そして内側の点線は、働きを弱める“相剋(そうこく)”。相剋の関係にある食材を組み合わせて食べることが、バランスをとる秘訣です」
きんぴらごぼうを例にとると、「苦味」のごぼうに「辛味」のとうがらしという組み合わせ。ごぼうで体が冷えるのをとうがらしが防いでいるのです。
〈取材・文/河合知子 イラスト/霜田あゆ美〉
武鈴子(たけ・りんこ)
東京薬膳研究所代表。成人病研究所に勤務後、中国・四川省で薬膳理論を学ぶ。東洋医学と日本の気候風土、伝統料理を融合した「和食薬膳」を提唱。著書も多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです