(『天然生活』2020年5月号掲載)
素材ごとに“持ち味”を引き出す最適な煮方がある
煮物といえば「時間がかかる」と敬遠する向きもあり、飛田さんのもとにも「なるべく早くつくれるレシピが知りたい」との声が届くことも。
しかし短時間の調理が効果的な素材と、不向きな素材があることを知ってほしいといいます。
「たとえばふきは、きれいなひすい色を出すなら、煮る時間を短くして、冷ましながら味を含めるのがいい。煮すぎると色があせてしまいますので。豚の角煮は、肉の縮みを調整するために、かたまりのままじっくり下ゆでします。小さく切って煮れば、時間は短縮できますが、予想以上に縮むこともあり、肉のダイナミックさが失われることがありますから」
今回教えてもらう煮物は、いずれも、素材の持ち味を引き出す最適な煮方を模索した、飛田さんの定番レシピ。
ひとつひとつの素材と対話するようにつくり、味わってみてください。
飛田さん流 基本の「鯛のあら煮」のつくり方
春においしい鯛の新鮮なあらが手に入れば、ぜひつくりたい一品。
煮る前の湯引きのひと手間で、臭みを取ってうま味を生かして。

材料(つくりやすい分量)
● 鯛のあら | 1尾分 |
● ごぼう | 80g |
● うど | 1/2本 |
〈煮汁〉 | |
・水 | 1カップ |
・みりん、酒 | 各1/2カップ |
・砂糖 | 大さじ3 |
・しょうゆ | 1/4カップ |
● 木の芽(あれば) | 適宜 |
つくり方
1 鍋に湯を沸かし、煮立たない程度に火加減する。鯛を1切れずつ網じゃくしにのせてくぐらせ(一度に入れると身くずれしやすいので注意)、冷水にとる。
2 水の中でうろこや血合いなどを取り除き、ペーパータオルで水けを軽くきる。

湯にとおすことで血合いやウロコを取りやすくなるので、きれいに除く
3 ごぼうは皮をこそげ、5cm長さ、5mm角の拍子木に切って水に5分さらす。うどは皮をむいて5cm長さ、1cm角の拍子木に切り、水にさらす。
4 鍋に煮汁のうち水、みりん、酒を合わせて中火にかけ、煮立ったら2の鯛、3のごぼうを入れる。再び煮立ったら砂糖を加えて落としぶたをし、弱めの中火にして5分ほど煮る。
5 落としぶたを取ってしょうゆを加え、ときどき鍋を回したり、煮汁をすくって表面にかけたりしながら15分煮る。
6 5にうどを加えてさっと温め、火を止める。器に盛り、木の芽をのせる。
* * *
〈撮影/広瀬貴子 スタイリング/久保原恵理 取材・文/保田さえ子〉
飛田和緒(ひだ・かずを)
料理家。東京都出身。夫、娘とともに三浦半島に暮らし、地元の海山の季節の恵みを楽しみながら、シンプルでおいしい家庭料理を提案している。
インスタグラム@hida_kazuo
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです