(『天然生活』2019年12月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
冷えとりを習慣化したら、体も心も丈夫に
みれいさんが冷えとりを続ける理由は、とてもシンプル。
「下半身を温めると気持ちがいいし、なにより体調がよくなりつづけているから」
幼いころから病気がちだったのが、冷えとりを習慣にしてからは風邪をひきにくい丈夫な体になり、心もどっしり安定しました。
たとえ体調を崩したとしても、半身浴の時間を増やしたり食事を調整したりすることで、自分で整えられるように。
「冷えとりは、私が元気でいい本を書き続けるための大事なベース。始めて12年の間、一度も病院に行っていないし、薬も飲んでいません。今年の春も好転反応である瞑眩(めんげん)が続いていましたが、毒を出し切ったら止まり、それ以降すこぶる調子がいいです」
東洋医学には「病気がない状態が健康とは限らない」という考え方があります。
「未病(みびょう)」と呼ばれる状態のときに、いかに体から毒を排出できるか、それが発病の分かれ道になります。
「冷えを放置したままだったら、自分の場合はがんなどの大きな病気になっていたと思う」と、みれいさん。
「昨年、レギンスが1日で股から足首までボロボロに裂けてしまったことがありました。そのとき急に生理も始まり、大きな毒が出たんだと直観しました。冷えとりを始めてから、大小さまざまな瞑眩や日々の毒出しで、体が病気にならないように調整してくれている実感があります。人間の体の奥深さを、思い知らされますね」
高校生で冷えとり健康法と出合い、すぐには始めなかったみれいさんですが、そのときに読んだ進藤義晴さんの本はずっと大事に持っていました。
「高校生ながらに『これはすごい本だ!』と感じて、役に立つ日がくると思い、捨てなかったんです。実践するまで時間がかかってしまったけれど、物事にはタイミングがあるから、36歳で始めたのも運命だったのかなと」
血と気がめぐると、いい循環がうまれる
冷えとりを始めたのは、大きな病気と仕事のストレスなどが重なり、心も体も弱り切っていたとき。
そんな状況だったからこそ、「とにかくやってみよう」と、強い意志で迷いなく、冷えとりと向き合えたといいます。
服装がハードルになり、しり込みする人は多いようですが、全然抵抗はなかったそう。
「靴下をたくさんはいて笑われたりもしたけど、目先のことより長い目で見た幸せを選びました。『体をよくする』という目的が明確だったからブレなかった。生活は変えたくない、でも健康は手に入れたいと、両方同時に求めるのは、ちょっと違う気がします」
自分をよく見せたい、いい暮らしがしたい。お金がなくなったら、嫌われたらどうしよう。そんな我欲や我執、恐怖心を手放してストレスなく暮らせる社会なら、冷えとりは必要ないのかもしれません。
でも現代人は仕事や家事に追われ、たくさんのしがらみや重圧のなかで、欲と不安をあふれるほどに抱えて生きています。
「自分がまさにそうでした。頭だけであれこれ問答して、かっかした状態で必死にがんばろうとするから、すべてに無理が生じてしまう。それで調子が悪くなって薬で症状を抑えてまた仕事をする。心身に余裕がないから成果が出ない。成果が出ないから落ち込んで、また不調に……。そうやって体にも心にも毒がどんどんたまって、がんじがらめになっていたんです」
みれいさんは冷えをとり、悪循環から抜け出しました。
心身の頭寒足熱を徹底すると、血と気がめぐり、精神も人間関係も、すべてが呼応してめぐり出す、そんな感覚があるといいます。
「進藤先生は『冷えとりを続けていると、病気が治るだけではなくて運勢も変わってくる、心がけが変わると自然に幸せに生きられる』とおっしゃっていますが、本当にそう。冷えをとるにつれて心も変わり、無理のない自分でいられるようになりました。それでますます体調もよくなり、いい循環に身を置けるようになるんです。冷えとりはやればやるほど、発見があります。続けた先にどんな世界が待っているか、とっても興味深いです」
みれいさんの冷えとりヒストリー
出合いから実践までに、20年近い空白期間が。さまざまな苦労の末、満を持して冷えとりライフに。
17歳 冷えとりと出合う
冷えとりをしていた母の薦めで進藤義晴さんの著書を読み、冷えとり健康法を知る。本の内容には興味をひかれるも実践には至らず。
「母のことを『靴下教!』といってバカにすることも。自然派の母に反発する気持ちが強かったし、とにかく子どもでした」
28歳 肺結核になる
上京してから、それまでの反動でジャンクフードを食べまくり、夜遊びをして「悪事の限りを尽くした」結果、体を壊す。肺結核になり、薬(抗生物質)で治療する。
「このとき薬で症状を抑えたせいだと思いますが、数年後、肺とつながる大腸が重い病気に……」
33歳 潰瘍性大腸炎になる
難病認定の潰瘍性大腸炎を患い、強い薬と手術で治療するが一進一退を繰り返す。
36歳 冷えとりを始める
整体の先生に冷えとり健康法を薦められ、すぐに進藤義晴さんの本を読み直して始めることを決意。
「自分に必要なのはこれだ! とひらめきました。初めて半身浴をして、靴下を4枚はいて寝た翌朝、部屋中にとんでもない悪臭が! 毒が出たと心から納得できて、以後、半身浴と靴下は1日も欠かしていません」
当初から花粉症やPMSの改善など、さまざまな変化があり、何度も瞑眩(好転反応)を経験し大腸の症状も緩和した。
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/熊坂麻美〉
服部みれい(はっとり・みれい)
岐阜県生まれ。文筆家・詩人、『マーマーマガジン』編集長。著書に『冷えとりスタイルブック』(エムエム・ブックス)など。