(『天然生活』2022年11月号掲載)
「冷え」には、ただ温めるだけでなく“バランス”が大事
不調の原因=冷えというイメージが強く、“とにかく体を温めて”という風潮があります。
でも、ただ温めればいいのではなく、大事なのはバランス。体の中には温める力(陽の気)と、冷ます力(陰の気)のふたつがあり、そのバランスをイーブンに保つことで、体が正常に働くのです。
この温める力が十分ではなかったり、冷えやすい環境に長く身をさらしたりすると、冷ます力が旺盛になり不調を引き起こすのです。
温める力が十分でれば、血液がしっかりめぐり、体温が維持されます。温めすぎると「陽」の力が強くなりすぎ、体を潤したり冷ましたりする力が弱まります。それがほてりや乾燥につながることも。
冷えも種類はさまざま。処方もそれぞれです
「冷え」の処方
処方①
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
体を温めて寒さを散らす「温経散寒剤(うんけいさんかんざい)」の代表選手。セリ科の多年草・当帰(とうき)や、シナモンの樹皮である桂皮、生姜など「温め」の生薬が配合されている。
処方②
温経湯(うんけいとう)
血を補い、めぐらせ、体を温める。潤す働きをもつ生薬の麦門冬(ばくもんどう)、阿膠(あきょう)なども配合されているので、ほてりがあるときにも効果が期待できる。
処方③
八味地黄丸(はちみじおうがん)
8種類の生薬で構成され、五臓のうちの「腎」の機能を高め、冷えを伴う腰痛や下半身のだるさ、頻尿、夜間尿などのお悩みに。
こんな症状には
手足が冷える
手足の先まで血がめぐっていないことから冷えを感じるタイプ。筋肉量も不足気味かも。
⇒処方:①/②/③
トイレが近くなる
水分をそれほど摂ってないのに、頻繁にトイレに行きたくなる人は、腎の冷えが原因かも。
⇒処方:③
冷えとほてり
上半身がのぼせて下半身が冷えるなどの症状。体内に熱がこもっている場合も。
⇒処方:②
冷えと痛み
冷えていることで体がこわばり、血行不良から肩こりや腰痛、頭痛を引き起こすことも。
⇒処方:①/②/③
冷えてだるい
温める力や、気が不足し、手足がむくんでしまう。疲労感や倦怠感がある場合も。
⇒処方:③
〈撮影/近藤沙菜 イラスト/須山奈津希 構成・文/鈴木麻子〉
杉本薬局(すぎもとやっきょく)
1950年の創業以来、一人ひとりの体質に合った漢方薬や自然薬を提案。三代目の杉本格朗さんと弟の哲朗さんらと家族で経営。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです