小屋ルームツアーへようこそ
気持ちいいキッチンと小上がりのリビング
小屋をつくるとき、決めていたことがある。それは、大きな窓のあるキッチンにすること。外を眺めながら料理ができたら、さぞかし気持ちいいだろうなあと思っていたのだ。
元々ついていた2つの窓の下に、シンクとガスコンロ台を取り付けることで、光が燦々と降り注ぐ明るいキッチンになった。庭の様子を眺めながら、材料を切ったり、盛り付けしたり、つまみ食いしたりしている。
ガスコンロはリンナイ製、シンクは両親と一緒にイケアに行って選んだ。収納棚はすべて自作で、収納ボックスは無印良品のかごを使っている。冷蔵庫や炊飯器、電子レンジなど、必要な家電や道具はひと通り揃っている。
大正解だったのが、カウンターキッチンにしたこと。地元の大工さんに頼んでつくってもらい、父と2人で設置した。カウンターがあることでキッチンとリビングの仕切りになって、気分の切り替えができるし、小屋全体も広く感じられる。
食事はもちろん、動画の編集や書き物もできる。お客さんが来たときは、僕がキッチンの椅子に座って、顔を見ながら話ができる。
天井と壁には杉の羽目板を張り、素足で歩いても気持ちがいいように床は檜張りにした。小屋の雰囲気に合わせて、窓にはウッドブラインドを取り付けた。
カウンターキッチンを挟んだ向かい側がリビングスペースだ。
畑仕事から戻ってきたとき、靴から土がこぼれてもいいように玄関土間をつくり、美江子さんが腰掛けやすいように小上がりを設けた。
畳を敷き、ちゃぶ台を置いて、のんびりお茶したりお客さんを招いたりしている。
リビングの奥にある扉は、道路から出入りするためのもの。道路側からは目立たないようになっているので、扉の存在に気づかず通り過ぎてしまう人も多い。
小屋づくりの参考にしたもの
本来は、どういう内装にするかある程度固めてから解体するのかもしれないが、僕はとりあえず解体しよう、後のことはそのとき考えようと思って小屋づくりをスタートさせた。
この頃は消防士の仕事もしていたので、作業できるのはほぼ休日だけ。昼間は小屋の解体、夜は雑誌や本、世界の暮らし系ユーチューバーの動画を見て、どんな小屋にしようかと構想を練っていった。
いちばん参考にしたのは、母の本棚で見つけた『別冊天然生活 德田民子さんの工夫のある家仕事』(扶桑社)だ。
德田さんはファッション誌『装苑』の元編集長で、現在は長野県安曇野市で家仕事やおしゃれを楽しむ暮らしをされている。
青いタイルのキッチン、かごを使った収納、好きなものだけを厳選したキッチンツールなど、取り入れたいことが詰まっていた。
ジブリが好きで田舎暮らしをしている韓国のユーチューバー、냥숲 nyangsoopさんからもたくさんインスピレーションをいただいた。
キッチンはアイランド型もいいなとか、靴のまま生活できるようにいっそ全部を土間にしようかなとか、アイデアが浮かび過ぎて困ったが、現実的な父と「どういう家にしたいのか」を話し合い、一緒に設計図を描いて、できることとできないことを整理していった。
母は僕たちが話したり作業したりしている様子を見て、何だか男2人が楽しそうにやっているなあと思っていたらしい。
本記事は『TAKASU TILE 自分をHAPPYにする暮らし方』(誠文堂新光社)からの抜粋です
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YouTubeで田舎暮らしを発信するTAKASU TILEのライフスタイルエッセイ
季節とともに暮らし、日常の小さな喜びを大切にする。自分を満たし、家族や周りに幸せの輪を広げていく。小屋づくりから畑仕事、料理、日々のルーティン、おばあちゃんとの時間、大切な人たちとの交流まで、人気ユーチューバーTAKASU TILEさんの田舎暮らしの日常を綴りました。
消防士時代、出会いから結婚、がんのこと、亡くなった兄のことなど、これまで動画では伝えてこなかった内容も盛りだくさん。暮らしを通じて自分をHAPPYにするためのヒントが見つかる1冊です。
〈撮影/川原﨑宣喜 協力/Team TAKASU〉
髙須亮佑(たかす・りょうすけ)
映像作家・クリエイター。1994年生まれ。愛知県額田郡幸田町出身。消防士として8年働いたのち、映像作家として独立。現在は100年続く家業の瓦屋「高須製瓦」の屋号を引き継ぎ、ユーチューブチャンネル「TAKASUTILE」を運営している。田舎の風景、日々の暮らし、家族団らん、当たり前にある日常の尊い時間など、自身のライフスタイルに根差したコンテンツを発信している。
YouTube:TAKASU TILE