(『天然生活』2021年3月号掲載)
古い家にしっくりなじむ日常使いのアイテムたち
洋服作家の美濃羽まゆみさんが、「余り生地だけでつくりました」と紹介してくれたのは、個展に出品したばかりの新作トップス。
「コートを仕立てると半端な生地がたくさん残ってしまうのですが、いつか服づくりに生かしたいとずっとためていました。定番ものとは違っていろいろな柄ができ上がり、お客さまにも選ぶ楽しみを味わっていただけたようです」
服に限らず、はぎれを上手に使うのは、美濃羽さんの得意分野。鍋つかみやティッシュケースはもちろんのこと、掃除道具のはたきまでお手製です。聞けば、布を裂いて束ねるだけのはたきづくりはとても簡単。布の長さやボリュームも好みで調節できるので、手づくりするのがおすすめなのだとか。
「この町家に越してきてから、高いところのほこりが気になるようになって。はたきをあれこれ探しましたが、カラフルだったりプラスチック製だったり、この家にしっくりくるものがなかなか見つからなかった。それなら自分でと、子ども服のはぎれと廃材の竹の棒でつくってみたら、軽くて丈夫でかわいいはたきができました」
実は今回紹介してくれた愛用品、はたきと同様に町家暮らしがきっかけで使い始めたものばかり。
古い建具や障子の桟をさっときれいにできる荒神ぼうき。町家の少収納にうれしい、オールマイティ対応の石けん洗剤。ペタペタと足音がひびかず、夏さらっとして冬暖かい羊毛のルームシューズ。
どうやら築約百年の町家になじむようにと美濃羽さんがコツコツ選んできたものは、サスティナブルな視点でつくられたものと見事に重なったようです。
「この家自体が、ずっと前から受け継がれてきたものですからね」
長生きしてきた町家を大切に思い寄り添うように暮らすなかで、美濃羽さんは未来のことも考えたものづくりやもの選びを、自然に身に付けてきたのかもしれません。
美濃羽まゆみさんの愛用品
「FU-KO basics.」のパッチワークトップス
コートの制作時に出る余り布をつなぎ合わせた新作のトップス。販売会に合わせ、1点ものとして制作したそう。
「残った布を組み合わせていくので同じものはつくれないのですが、さまざまな色や柄ができて面白かったです」
フリースやボアは肌触りもよく、底冷えの町家でも「軽くて暖かい」と美濃羽さんも愛用。洗濯機で洗えるのもポイント。
生活クラブの洗濯用無添加せっけん(針状)
洗濯、食器洗い、掃除、手洗いまで、これひとつでこなす美濃羽さん。用途に合わせた濃度に水で溶かし、食器用や手洗い用はお気に入りのボトルに。
純石けんなので環境にもやさしく、使い回すことで包装類のゴミの削減にも。
マジックフェルトのルームシューズ
「立体成形で継ぎ目がないので、足にフィットして脱げにくいです。チロル地方の羊毛を使っていて通気性が抜群。夏に素足で履いても蒸れなくて気持ちいいですよ」
絶滅危惧種の羊の保存に目を向けた生産者の活動にも共感。
道の駅の荒神ぼうきと手づくりのはたき
先端をカットしたり、布をつけ替えたり、手軽にリペアできる昔ながらの掃除道具。
コンパクトで軽いので持ち運びもしやすく、収納場所を取らないのも美濃羽さんのお気に入りポイント。もちろん、使い放題で光熱費はゼロ。
伊賀焼窯元 長谷園のかまどさん
破損などのアフターケアとして、上・中ふた、本体とパーツ販売も対応している炊飯用の土鍋。
「中ふたがあるので、火加減の調整なしでもおいしいごはんが炊けます。土ものは欠けることもあるので、もしものときにも心強いですね」
<撮影/いのうえまさお(TAND) 取材・文/山形恭子、鈴木理恵(TRYOUT)>
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
家族4人、猫1匹と京町家に暮らす。著書に『「めんどう」が楽しい衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)や『美濃羽まゆみさんの手づくりのある暮らし』 (扶桑社ムック)など。美濃羽まゆみ-YouTubeにてつくり方なども公開中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです