(『天然生活』2022年2月号掲載)
庭の草花を飾って、日々の暮らしを彩る
庭に咲く花々を家の中にさりげなく飾る。そんなささやかだけれども贅沢な毎日を楽しんでいるのが小林南水子さんです。
2016年から一年間、毎日インスタグラムにアップした「身近な草花」の写真は、どれもなじみのある花たちばかり。それもそのはず、そのほとんどが小林さんの自宅の庭に咲く季節の草花たちなのです。
「庭に出て、その日の気分で花を摘んで飾ります。私の活け方は、すべて自己流。気に入った器に、そのときいいなと思うかたちで自由に活けて楽しんでいます」
小林さんのこだわりのひとつが、花を活ける花器。専用の花びんはほとんど持たず、グラスや皿などの日常使いの器や、大好きなアンティークの雑貨を花器に見立てて飾ります。
「身近な草花が好きなこともあって、小さな器にさりげなく活けるのも好きです。日々、花を飾っていると、だんだん自分好みの活け方が身についてくるので、活け方や飾り方にもあまり迷わなくなりますね」
築64年の自宅は、自身で自分好みに少しずつ手を加えて、居心地のよいお気に入りの空間に。玄関、廊下、リビング、キッチンと、その季節に咲いている草花たちが、家の中を流れる時間を豊かにしてくれています。
庭の花を使うので、そのときに飾る花の種類は限られますが、飾り方をいろいろ変えることで、さまざまに違う表情を見せてくれます。
「花を長く楽しむには、毎日水を取り替えてあげること。花器と一緒に茎のぬめりも洗い流し、茎を少し水切りしてあげると長持ちします」
摘んできた草花を束ねたスワッグは、鮮やかな緑が朽ちてドライになっていく様子も魅力。草花の形や色が、時間の経過とともに移り変わる美しさを感じます。
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小林南水子さんの花と緑の楽しみ、5つの工夫
小林さんの緑の工夫01
スワッグにまとめる
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難しいテクニックがなくてもすぐできるのがスワッグです。摘んできた草花を上から順に重ねて、そのときの気分で仕上げます。
「いちばん下に長めにカットした葉を置いたら、その上に短くした葉や花、実ものを重ねて輪ゴムで固定。最後に麻ひもを巻きつけてでき上がり。ほんの10分程度でさっとつくれます」
小林さんの緑の工夫02
庭の草花を室内に取り込む
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庭の花を飾るので、花の種類はそのときに咲いているものに限定されますが、飾る場所に合わせて花びんや花の組み合わせ、活け方を変えて、それぞれ違う表情を楽しめるように。
大ぶりの白い花が華やかなサザンカは、ガラスの脚付きの器に挿して小さなテーブルに。重し代わりの石で茎を押さえて花のバランスを固定します。
小林さんの緑の工夫03
落ち葉で季節を感じる
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お気に入りのフランス小道具店ル・ミディ(現在は休業中)で見つけた木皿には、庭で拾った木の実や色づいた落ち葉を入れて窓辺にある飾り棚へ。
「木の皿の持つあたたかみと木の実や葉っぱたちが、自然のあたたかみを感じさせてくれます。一度飾ったら、そのままでいいのも気に入っています」
小林さんの緑の工夫04
吊り金具で水まわりを彩る
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トイレや洗面所などの水まわりには、花を欠かさないというのが小林さんのこだわり。
「狭い場所だけに、邪魔にならないように小さな花をシンプルに飾るようにしています」
トイレには天井からアンティークアイアンの吊金具に一輪挿しの小さな花びんを。白いサザンカと鮮やかな緑が、清潔感を与えてくれています。
小林さんの緑の工夫05
灯火器にショットグラスの花びんを
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キッチンの広い白壁に吊り下げてあるのは、インドで使われていたアンティークの灯火器。お玉のような部分に花びんに見立てた小さなショットグラスを置き、野花をさりげなく飾ります。
「今日はイヌダテ、小菊、ヤブランの3種類。ガラスの厚みのある小さなショットグラスは、小さな野花を活けるのに重宝しています」
緑を楽しむための道具
ゴルショーク
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ロシアの古いミルク壺。花器として使うのに、色合いや形がぴったり。まったく同じ色や形がないのも魅力
〈撮影/近藤沙菜 取材・文/工藤千秋〉
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小林南水子(こばやし・なみこ)
庭に咲く四季折々の草花を自由気ままに飾ることで、日々の暮らしに彩りを取り入れて楽しむ。著書に『生け雑草』(柏書房)がある。
インスタグラム@namiko.koba
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです