和装から教えてもらったこと
もうひとつ、30代後半から着始めた和装も、私の装いにおいて大きな変化のひとつ。
和装を楽しむようになったきっかけは、7年前娘と一緒に日本舞踊を習い始めたことから。
もともと結婚前に、着物好きだった母から譲り受けた大島紬や訪問着がいくつかあり、それを和装の先生にお願いして自分サイズにお直ししてもらい、いまも大切に着ています。
よくいわれることですが、和装はメリハリのある若い体形よりも、年齢を経た体形の方が格好よくきまります。
そう、若いころはタオルをたくさん巻き付けて苦しかったけれど、今は自前の肉襦袢のおかげで補正いらず!
また、着物を着るようになって気づいたのが「姿勢」の大切さ。
もともと猫背ではなかったのですが、着物を着るとより背筋がしゃんと伸びます。
とくに、自分で着物を着られるようになると、それまで窮屈で息苦しいイメージだった帯もほどよい具合で締められるようになり、「なんだこの快適さは!?」と驚きました。
和装をしない方からすれば、‟帯を締めているとさぞ苦しかろう”、というイメージですが、背中の反り具合を無理なく正しい位置にキープしてくれるようで、帯を締めている方が動作は楽。
洋服と違ってかがむことができないため、もちろん床に落ちたものなどはしゃがんで拾わなければなりませんが、その方が腰を痛めず、かえって無理なく体を動かせます。
しかも、その方が見た目にも断然エレガント! それだけ、姿勢は大事な要素だなと思います。
洋服を着ている時だってそう。すてきなコーディネートなのに姿勢がだらしなかったら魅力は半減してしまうというものです。
そして、この姿勢やふるまいと並び、もうひとつ意識していたいと思うのが、「笑顔」でいること。
いくらお気に入りの装いだとしても、しかめっ面をしていたら台無し。
それに、笑顔を向けられて嫌な顔をする人はまずいませんよね。笑顔で接していれば、きっとその人の悪いところよりいいところの方にすっと目がいくのではないでしょうか。
周囲の人にはもちろんですが、たとえば道ですれ違う人や店員さんのような、人生において今日一度きりの出会いであろう人にこそ、とびきりの笑顔を向けたいものだなと思います。
“美しくいたければ、美しいものを見るといい”
いつも品よく素敵な笑顔で接してくださる、私と同世代の舞踊の先生から教わった言葉です。
〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。
現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。
ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
インスタグラム:@minowa_mayumi
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