年を重ねることを楽しむために
「アンチエイジング」や「若見え」という言葉はあまり好きではありません。
実際、私のまわりにおられる素敵な年上の方は、決して老いを嘆いたり若さを装ったりはしていないから。
年齢に裏付けされた美意識をしっかりと持ち、年齢相応の落ち着きや品格を備えておられる気がするからです。
年齢を経て変化する心と体ではありますが、失ったものを嘆いていても仕方がない。
もちろん、年を経るにつれて残念ながら肌のハリは失われてくるし、白髪やシミしわもちらほら目立つようになったけれど、その分、若いころより鮮やかな色柄がふしぎと似合うようになるのはうれしい変化。
いままで敬遠していたパステルカラーや大胆な幾何学模様の服も、手持ちのベーシックなアイテムと合わせながら、どんどん試していきたいと思っているところです。
若さやしなやかさは年齢を経るにつれ失われていきますが、そもそもそれらは一時神様から授かっていた、いわば「借りもの」だったのではないでしょうか。
むしろ「ない」からこそ「ない」なりに工夫して、自分らしくおしゃれを楽しんでいる人はかっこよく見えるし、そんな風に楽しみ方を掘り出していくことの方がずっと豊かな気がします。
とはいえ、自分の体をいたわることは忘れないでいたいですよね。
私自身でいうと、手入れすることで見違える部分は、できるだけていねいに磨いておくことを心掛けています。
たとえば、若いころはほったらかしでもつやつやだった髪の毛や手指。それらは、いまからでも手入れすればするほど、確実に効果が目に見える部分。
毎日続けて手入れしていると、「最近食事がおろそかになっていたかな」「疲れが出ているからゆっくり湯船につかろう」など、体調の変化にも気づきやすくなり、早めに自分自身をいたわることができるようになりました。
装いは、自分らしく年齢を重ねていくためのひとつのツール。
どう生きたいか、どう自分の命をまっとうしていくかが如実に表れるテーマなのだと思います。
これからも、自分自身の移ろいと向き合いながら、私らしく装いを楽しんでいけたらと思います。
―― 引き続き、次回は40代になって愛用しているアイテムを、写真とともに紹介します!
〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。
現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。
ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
インスタグラム:@minowa_mayumi
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