十二月二十八日の日記
十二月二十八日(火)
曇りのち晴れ
きのうの夕方、六甲に帰ってきた。
中野さん(◆)の家はとても寒く、子どものころの冬休みを思い出した。
帰りの神戸電鉄の中も、換気のために窓を少し開けてあってうすら寒く、鈴蘭台ではホームに粉雪が積もっていた。
六甲駅も今にも雪が降り出しそうで、みなコートの衿を立てて足早に歩いていたけれど、うちに帰ってきたら暖かかった。
セントラル・ヒーティングの威力はすごいな(建物自体が暖かい)。
あと、帰ってきたら、柱時計が壊れていた。
ネジを巻いて、傾かないように気をつけても、振り子が自然に止まってしまう。
何度試してみてもだめ。どこかに引っかかっているみたい。ここで六年以上も働き続けてきたのだから、そろそろメンテナンスの時期なのかもしれない。
中野さんの家でのクリスマスは、今年もとっても楽しかった。
お姉さんたちの寝室に泊めてもらっていたので、隣で寝ているユウトク君、ソウリン君と、起き抜けにふざけ合ったり。
夕飯を食べてから、庭にできた小屋(中野さん、お義兄さん、ユウトク君が廃材で建てた。広さは一畳くらいだろうか。膝を抱えれば大人が三人、子どもがふたり、ぎゅうぎゅうで入れる)で星空を眺めたり、ユウトク君と冬休みの宿題をしたり。
ここからは、メモをしておいた三泊分の日記を書きます(※この記事では、一日分の日記のみ掲載します)。
◆画家で絵本作家の中野真典さん。兵庫県在住
十二月二十五日(土)
六時半に起きた。
着替えていたら太陽が昇ってきたので、ユウトク君、ソウリン君と三人で朝の散歩。
あぜ道の植物は、霜で覆われて白くなっていたのが溶けはじめ、ぴかぴかしていた。
ハーッとすると白い息が出る。
寒いけど、気持ちいい。
あぜ道をぐんぐん歩き、早歩きをしたり、走ったりの競争。
ユウトク君は用水路で立ち止まり、のぞき込む。
「水、きれいで。前はここに、大きい魚がいたんで」
帰ってから朝ごはんを食べ、かるたをした。
ソウリン君がいちばん強い。幼稚園の年長さんなのだけど、字が読めるみたい(と思ったら、絵と言葉を暗記しているらしい)。
二回目からは、私もけっこう取った。
お姉さんと買い物(「道の駅」みたいなところで野菜と生牡蠣、甲イカ。肉屋さんで鶏の骨つきもも肉。スーパーで手羽先、海老)。
クリスマスのごちそうは、蒸し牡蠣(殻つき)、鶏のもも焼き(ひとり一本ずつ! にんにく入り甘辛ダレ)、ミニ南瓜の丸ごとグラタン(海老、マカロニ、ホワイトソース、チーズ)、クリスマスケーキ二種。
食後にプレゼント交換。
お姉さんから、オリーブ色の麻のエプロンをいただいた!
私からのプレゼントは、大人たちには冬のくつ下、ユウトク君とソウリン君には、手編みの〝羊飼いのベスト〞。
中野さんは、お姉さんたちの家族に大きな絵を贈った。朝焼けの空のもと、それぞれの馬に乗ったユウトク君とソウリン君が、赤と白の〝羊飼いのベスト〞を着て前に進んでいる。
最後に、ユウトク君から「ふくう食堂」の木の看板をプレゼントされた。
ソウリン君は、サンタさんにもらったお菓子袋の中から、お菓子をふたつくれた(あとでお姉さんに聞いたのだけど、自分がいちばん好きなお菓子だそう)。
(『空気が静かな色をしている-日々ごはん2021.7→12』より抜粋)
<写真・文/高山なおみ>
高山なおみ
1958年静岡県生まれ。料理家、文筆家。2016年に東京・吉祥寺から神戸・六甲へ移住し、ひとり暮らしをはじめる。本を読み、自然にふれ、人とつながり、深くものごとと向き合いながら、創作活動をしている。『日々ごはん』『帰ってきた 日々ごはん』シリーズ、『暦レシピ』、『新装 野菜だより』、『本と体』、『自炊。何にしようか』、『気ぬけごはん』、『日めくりだより』、『毎日のことこと』、絵本に『どもるどだっく』『たべたあい』『それからそれから』(以上、絵・中野真典)など著書多数。
公式ホームページ :
* * *
毎日食べるごはんのように、今日を味わいながら、この世界を生きていく。神戸に暮らす料理家・文筆家である高山なおみさんの日記エッセイが新装リニューアル! 2016年に神戸へ拠点を移して6度目の夏から冬、2021年7月から12月の日記を収録。