• 東京・吉祥寺から神戸・六甲に移住した、料理家・文筆家の高山なおみさん。その、日々の暮らしを丁寧に綴る日記が『空気が静かな色をしている ー日々ごはん2021.7→12』として発売されました。3年前のクリスマスを振り返る12月28日の日記から、ゆったりと流れる時間の中でのごちそうやプレゼント交換の心温まる思い出をお届けします。

    十二月二十八日の日記

    十二月二十八日(火)
    曇りのち晴れ

    きのうの夕方、六甲に帰ってきた。

    中野さん(◆)の家はとても寒く、子どものころの冬休みを思い出した。

    帰りの神戸電鉄の中も、換気のために窓を少し開けてあってうすら寒く、鈴蘭台ではホームに粉雪が積もっていた。

    六甲駅も今にも雪が降り出しそうで、みなコートの衿を立てて足早に歩いていたけれど、うちに帰ってきたら暖かかった。

    セントラル・ヒーティングの威力はすごいな(建物自体が暖かい)。

    あと、帰ってきたら、柱時計が壊れていた。

    ネジを巻いて、傾かないように気をつけても、振り子が自然に止まってしまう。

    何度試してみてもだめ。どこかに引っかかっているみたい。ここで六年以上も働き続けてきたのだから、そろそろメンテナンスの時期なのかもしれない。

    中野さんの家でのクリスマスは、今年もとっても楽しかった。

    お姉さんたちの寝室に泊めてもらっていたので、隣で寝ているユウトク君、ソウリン君と、起き抜けにふざけ合ったり。

    夕飯を食べてから、庭にできた小屋(中野さん、お義兄さん、ユウトク君が廃材で建てた。広さは一畳くらいだろうか。膝を抱えれば大人が三人、子どもがふたり、ぎゅうぎゅうで入れる)で星空を眺めたり、ユウトク君と冬休みの宿題をしたり。

    ここからは、メモをしておいた三泊分の日記を書きます(※この記事では、一日分の日記のみ掲載します)。

    ◆画家で絵本作家の中野真典さん。兵庫県在住

    画像: 28日 昼ごはん。肉まん、ほうれん草のおひたし(じゃこをかけた)、蓮根のきんぴら、かぼちゃのマヨネーズ和え、ゆで卵、わかめスープ

    28日 昼ごはん。肉まん、ほうれん草のおひたし(じゃこをかけた)、蓮根のきんぴら、かぼちゃのマヨネーズ和え、ゆで卵、わかめスープ

    十二月二十五日(土)

    六時半に起きた。

    着替えていたら太陽が昇ってきたので、ユウトク君、ソウリン君と三人で朝の散歩。

    あぜ道の植物は、霜で覆われて白くなっていたのが溶けはじめ、ぴかぴかしていた。

    ハーッとすると白い息が出る。

    寒いけど、気持ちいい。

    あぜ道をぐんぐん歩き、早歩きをしたり、走ったりの競争。

    ユウトク君は用水路で立ち止まり、のぞき込む。

    「水、きれいで。前はここに、大きい魚がいたんで」

    帰ってから朝ごはんを食べ、かるたをした。

    ソウリン君がいちばん強い。幼稚園の年長さんなのだけど、字が読めるみたい(と思ったら、絵と言葉を暗記しているらしい)。

    二回目からは、私もけっこう取った。

    お姉さんと買い物(「道の駅」みたいなところで野菜と生牡蠣、甲イカ。肉屋さんで鶏の骨つきもも肉。スーパーで手羽先、海老)。

    クリスマスのごちそうは、蒸し牡蠣(殻つき)、鶏のもも焼き(ひとり一本ずつ! にんにく入り甘辛ダレ)、ミニ南瓜の丸ごとグラタン(海老、マカロニ、ホワイトソース、チーズ)、クリスマスケーキ二種。

    食後にプレゼント交換。

    お姉さんから、オリーブ色の麻のエプロンをいただいた!

    私からのプレゼントは、大人たちには冬のくつ下、ユウトク君とソウリン君には、手編みの〝羊飼いのベスト〞。

    中野さんは、お姉さんたちの家族に大きな絵を贈った。朝焼けの空のもと、それぞれの馬に乗ったユウトク君とソウリン君が、赤と白の〝羊飼いのベスト〞を着て前に進んでいる。

    最後に、ユウトク君から「ふくう食堂」の木の看板をプレゼントされた。

    ソウリン君は、サンタさんにもらったお菓子袋の中から、お菓子をふたつくれた(あとでお姉さんに聞いたのだけど、自分がいちばん好きなお菓子だそう)。

    (『空気が静かな色をしている-日々ごはん2021.7→12』より抜粋)


    <写真・文/高山なおみ>

    高山なおみ
    1958年静岡県生まれ。料理家、文筆家。2016年に東京・吉祥寺から神戸・六甲へ移住し、ひとり暮らしをはじめる。本を読み、自然にふれ、人とつながり、深くものごとと向き合いながら、創作活動をしている。『日々ごはん』『帰ってきた 日々ごはん』シリーズ、『暦レシピ』、『新装 野菜だより』、『本と体』、『自炊。何にしようか』、『気ぬけごはん』、『日めくりだより』、『毎日のことこと』、絵本に『どもるどだっく』『たべたあい』『それからそれから』(以上、絵・中野真典)など著書多数。

    公式ホームページ :

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    『空気が静かな色をしている-日々ごはん2021.7→12』(高山なおみ・著/アノニマ・スタジオ)

    画像: 心温まる「クリスマス」の思い出。高山なおみさんの“日々ごはん”2021年12月28日

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    毎日食べるごはんのように、今日を味わいながら、この世界を生きていく。神戸に暮らす料理家・文筆家である高山なおみさんの日記エッセイが新装リニューアル! 2016年に神戸へ拠点を移して6度目の夏から冬、2021年7月から12月の日記を収録。



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