(『天然生活』2024年1月号掲載)
すっきり片づけるのは自分が楽をするため
2023年8月、都心のマンションに引っ越しをした料理家の渡辺康啓さん。約70m2の1LDKでラブラドールレトリバーの愛犬ジーノと一緒に暮らしています。
「ひとり暮らしのころに比べたら、いまはそんなに整っていないかも。ひとりのときは、自分が置いたものは絶対に動かないし、自分が汚さない限り部屋は汚れません。でも、動物は自分の思い通りにはならないから、多少整っていなくてもまあいいかと。ジーノと暮らすようになって、いい意味であきらめがよくなりました。気持ちよく暮らすためには、頑なにならず、自分を許すことも大事。いまは暮らしがずいぶん楽になりました」
ほどよくあきらめているとはいえ、キッチンは必要なものがあるべき場所に整然と配置され、ガス台もシンクもピカピカ。
リビングには余計なものがなく、すっきり広々しています。楽に暮らしていても、ここまで整っているのはどうしてなのでしょう?
「そもそも、ものが少ないというのが大前提としてあると思います」
基本的にものをあまり買わないという渡辺さん。家にあるのはお気に入りのものだけ。
「好きなものばかりなので、ひとつひとつに心がちゃんと行き届いています。置き場所を決めて、ものが居心地いいように整えて。先日、お気に入りの鳥のオブジェのためにガラスのソファを買ったんです。誂えたようにぴったりで、ものすごくうれしかったですね」
すっきり整える
よく使うものだけ出しておく
「出しておくと汚れませんか? といわれますが、使うたびにふいたり洗ったりしますし、そもそも汚さないよう調理しています。きれいを保つコツは汚さないこと」
動線を考え、よく使う調味料や包丁は、すぐ手が伸ばせて取りやすい場所に。
体をターンさせれば必要なものが2アクション以内で手に取れるよう配置している。
すっきり整える
調理道具は使う場所の近くに置く
むだな動きをなくし、ストレスなく調理することがおいしさへの近道に。
コンロ下にはよく使う鍋を、味噌汁をよそうときに使うお玉は、最近コンロまわりから調理台のほうへ移動した。
「一度決めた置き場所も、どうすればもっと使い勝手がよくなるかを考えながら微調整するのが好き。収納場所も定期的に見直しています」
すっきり整える
食器棚は好きなものだけ
お店のショーケースのように整然とした食器棚。
「気に入ったものしか買わないので、器もめったに増えません。ものを増やさないことがすっきり暮らす最大のコツ。好きな作家さんの個展に行っても買わないこともありますよ」
とはいえ、気に入ったら同じものをまとめ買い。数が増えてもそろっていれば雑多にはならない。
<撮影/大森忠明 取材・文/和田紀子>
渡辺康啓(わたなべ・やすひろ)
料理家。イタリア料理をメインとした料理教室を主宰。YouTube「せせチャンネル」が好評で、登録者数約3万人。著書に『毎日食べる。家で、ひとりで。』(アノニマ・スタジオ)がある。インスタグラム@watanabeyas
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです