(『天然生活』2024年1月号掲載)
子どもの成長に合わせて変わる動線と収納の工夫
夫の太陽さんはプロダクトから企業コンサルまで行うデザイナー、妻の詩織さんはかご作家。ふたりとも手を動かすのが好きなご夫婦です。
この2階建ての一軒家も10年前に太陽さんが祖父母から譲り受け、セルフリノベーションしました。
4年前に子どもが産まれてからは、2階は作業場と衣類などの収納スペースにし、居住のメインを1階に。

壁を取り払い広々とした空間にリノベーション。タイル貼りのカウンターやシンク下の収納も太陽さんが自作
LDKのある1階は家族みんなが集う場所ということもあり、日々の小さな気づきを夫婦で共有。
子どものサイズ感も考え、見直し、手を加え、改善を繰り返しています。
その担当は太陽さん。「本当に突然スイッチが入るんです」と詩織さんは笑います。
「暮らしているなかで、動線に無理があるなとか、ものが届きにくいなとか、ついものを床に置いちゃうなとか、ふと違和感が生まれる。そのときはなんとなくやり過ごすんですが、頭の中に残っているんですよね。日々どうしたら改善できるかを考えて、それがたまってくるとスイッチが入るんです」と太陽さん。
思い立ったら手を動かして、収納を増やしたり、逆に減らしたり、ものの配置を替えたりと強制的にリセットを行います。
とくに1階は押し入れ収納がないので、うっかりすると家具が増えがち。とはいえ増えると圧迫感があるので、壁や建築構造を生かして収納を増やしています。
「釘を1本打った方が使いやすい収納ができる。あちこちフックや釘が打ってあるのもそのためです」
すっきり整える
暮らしに合わせて収納をつくる
「ここに棚があったら」「ここにフックがあったら部屋が片づく」など、暮らしながら手づくりし、増減させるのが安田家流。

玄関の凹みを生かして、靴棚を手づくり。オープン棚なので取り出しやすく、必然的にこまめに整理整頓をするという利点も
収納家具は増やさず、使っている家具のほとんどが10年選手です。

キッチンはりんご箱で収納を増やした。滑りをよくするシートを底面に貼ることで出し入れをしやすく
子どもが小さいので低い位置にフックを取り付けたり、生活実感を大切にしながら、適切な場所に収めることが整うポイント。

果物のかごのほかスリッパの収納かごなど、詩織さんが手を動かしてかごづくり
すっきり整える
住まいの構造を生かす
柱と梁と壁板でつくられる木造家屋。その構造を“読み”、「ここに棚がつくれるんじゃないか」と想像をめぐらすのが楽しいという太陽さん。

リビングの出窓上の壁に穴をあけ、梁を生かしてつくった本棚
壁をトントンと叩いて内部を確かめ穴をあけ、板を渡して補強をすることで棚に。

サニタリーの引き戸の上もこの通り。ストック類を一気に収納
家具を増やさなくて済むので、おのずと部屋がすっきり。
「あけてみて失敗することも」
すっきり整える
見立ての力を発揮する
家具選びは見た目の美しさや佇まいを重視。用途の定まった家具ではなく、「気に入ったものをどう生かすか」という発想で選ぶことで、空間を心地よく整えてくれます。

古道具店で購入した「Y.K.K」の引き出し。元はファスナー部品の収納用だったので引き出しの浅さと仕切り板が特徴。細かいものの分類収納にピッタリ
「〇〇用など、だれかがつくった機能に自分をはめるんじゃなくて、住まいや持ちものに合わせて工夫した方が使いやすく、ストレスもないから片づけが楽なんです」

袋やバッグを掛けているラックは、元は病院で点滴スタンドとして使われていたもの。華奢なフォルムで場所を取らない
<撮影/林 紘輝 取材・文/竹田理紀>
安田太陽、詩織(やすだ・たいよう、しおり)
太陽さんは、大学でデザインを学び、家電ベンチャー企業にて9年間、その後コンサルティング会社へ転職したのち、2022年に自身のデザイン事務所「THE SUN」を設立。@https://thesun.design/ 詩織さんは「itashiori」として、2017年より作家活動を開始。さまざまなギャラリーなどで個展を行っている。インスタグラム@itashiori
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです