(『天然生活』2020年1月号掲載)
郷土に伝わる大切な味を後世につなげたい
高山村の郷土食「酒まんじゅう」は、一度は廃れたものの、25年ほど前、村おこしの名物として復活。
その中心となったいしずえグループでは、飯塚和子さんの義母のマサエさんら「まんじゅう名人」から伝えられた製法を大事に継承しています。
現在のつくり手である椎林美紀子さんと真庭明代さんは、グループを引き継ぐまで、酒まんじゅうをつくったことがなかったそう。
「子どものころから祖母や母がつくったのを、食べるばかりでした。まさか、こんなに大変だったとは」と真庭さん。
酒まんじゅうは麹とごはんを発酵させて「まんじゅう酒」からつくります。酒と生地の仕込みだけで1日がかり。
しかも伝統の製法があるとはいえ、昔の人が「感覚」でやっていた微妙な塩梅は、経験不足の自分たちにはできない。
そう思ったふたりは、その日の気温や発酵の温度と時間、生地と酒の比率などを毎回細かく記録。徹底的に「数値化」することで、かつて親しんだ味を再現し、保っているといいます。
「せっかく甦った郷土の味、なんとか絶やさないようにしたいですね。やっぱり手づくりの味は、心がホッとするいいものですから」
高山村に受け継がれる味を堪能した飯島さん。
食べ物を自分の手で大切につくる村の人の姿勢にも、響くものがあった様子です。
<撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美>
飯島奈美(いいじま・なみ)
東京都八王子生まれ。フードスタイリストとして数々のテレビCM、映画、テレビドラマに関わり、記憶に残る「食」を表現。オリジナルレシピ付きのエッセイ集『ご飯の島の美味しい話』(幻冬舎)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです