(『天然生活』2021年3月号掲載)
いただいた命をむだなくいかしていく
東京・合羽橋で革製品店「と革」を営む髙見澤 篤さんは、捨てられてしまう動物の皮を革として蘇らせ、製品づくりを行っています。
野生であるがゆえに穴や傷などが残っていることもあるジビエ革ですが、天然のものにしかない魅力があります。
「いただいた命をどうむだなく生かすか」を模索している高見澤さんに、製品づくりのお話やサステナブルな取り組みを教えていただきました。
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前回のお話はこちら▼
髙見澤さんの、3つの持続可能な取り組み
1 ナイフや虫が噛んだあとも慈しんで

手で触れ、目を近づけると、商品ごと、革ごとに異なる風合いが伝わる
染料で染めてもなお動物の肌感が現れ、生きてきた間についた傷、猟師のナイフのあとなども残るジビエ革の商品は、ひとつひとつが個性的。
「財布などの金属のフレームにメッキをかけていないのは、使いつづけて革がいい雰囲気になってきたとき、違和感がないようにしたいから。
長く使っていただくなかで、革と一緒に素材感の変化を楽しんでいただけるようデザインしています」と髙見澤さん。

二つ折り財布「ココロ」。閉じる際、「手を合わせる」感謝の動作を伴う

革を成形して漆をかけた皿。元はアウトドア仕様として考案したという
2 特別支援学校の方に、つくる喜びを

革を挟み込むようにして金属のフレームを取り付ける、繊細な作業
2019年より、ご縁のあった特別支援学校の方たちに委託した仕事のなかには、がま口の財布に金属フレームを付ける作業(写真上)が。
「目をキラキラさせて、夢中でやってくれるんです。単純作業ではないですから、感じるものがあるのかな。こういう方たちの生きがいをつくることも、仕事だと思えました」と髙見澤さん。
コロナの影響で中断を余儀なくされているものの、いつかの再開を望んでいるのだそう。
3 猟師の知恵から生まれた熊油のクリーム

熊油の革ケアクリーム。「革の手入れにはリラックス効果があると思う」と髙見澤さん
熊の分厚い脂肪を煮て、こしてつくるクリームは、猟師の方たちが傷ややけどのケアに大切に使ってきたもの。
「驚くほどサラリとして、スペシャルな油だと思います。うちでは、冬場に子どもの肌の乾燥ケアにぬっています」と髙見澤さん。
この油を、革のケアクリームとして商品化する際、アカマツの香りをしのばせました。
「熊の育った土地の香りです。革のケアをしながら、思いを馳せてもらいたいと思って」

脂肪を洗濯ネットに入れ、とろりとするまで煮出す。ほとんどあくが出ないそう
〈撮影/小禄慎一郎 取材・文/保田さえ子〉
髙見澤 篤(たかみさわ・あつし)
Six coup de foudre(シス・クー・ド・フードル)代表。仏語で「第六感でひと目ぼれ」を表すブランド名には、「死す・食う・フード」、つまり肉を食べたあとの副産物を大事に使う、の意も。
と革
東京都台東区松が谷2-29-8 ベビーマンション105号
営業時間:平日10:00~17:00
㊡水・木・金曜
http://to-kawa.com
※営業時間、休みは変更になる場合があります。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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