90歳を迎えたいまも、古い団地でひとり暮らしを機嫌よく楽しんでいる多良美智子さん。「ひとりになっても楽しめる趣味」があるとよいとすすめています。最新エッセイ『90年、無理をしない生き方』(すばる舎)より、多良さんが長く続けている「絵手紙」の楽しみと描き方を教えていただきました。
絵手紙に針仕事……1人でできる趣味があると、家で何時間でも過ごせる
ずっと続いている趣味のひとつは絵手紙です。ハガキに絵を描き、かんたんな文を添えるものです。市民センターで絵手紙の作品展を見かけて、「やってみたい」と思い、先生に連絡を取ったのが60代前半でした。
始めた頃はまだ若かったのですが、夫が9歳年上だったので、「女性の平均寿命を考えると、いずれはひとりになる。ひとりになっても楽しめるものを持っておくのはいいな」と思っていました。
絵手紙、編み物、裁縫、読書など長続きしている趣味は、どれもひとりでできるものです。

孫に送っていた絵手紙。当時60代、絵にも文字にも力強さがありますね
絵が上手なわけではありませんが、絵手紙のキャッチフレーズが「ヘタでいい ヘタがいい」だったので、私の気持ちにピタッと合いました。
絵手紙を習い始めた頃、栃木県に住む孫(長男の息子)にほぼ毎日絵手紙を描いて、送っていたことがありました。
描きたくて描きたくてしょうがない時期で、「よし、毎日描こう」と。その絵手紙を長男がとっておいてくれ、ファイルに入れて整理してくれました。
「今の絵に比べて、この頃は勢いがあったな」なんて、懐かしく見返しています。上手に描こうという気はなくて、とにかくやる気だけはありました。
絵手紙を送っていた孫には、5歳下の妹がいました。まだよちよち歩きだったけれど、お兄ちゃんに送った絵手紙を、自分に届いたかのようにうれしそうに郵便受けに取りに行っていたそうです。
少し経ってから、今度はこの子にも送ったのですが、私の熱が冷めて7〜10日に1枚になってしまいました。「私には少ない」と、がっかりしていたようです。悪いことをしました。

多良さんに教わる、絵手紙の描き方
1 絵の輪郭や文字は墨で書くので、まずは、すずりで墨をすります。濃さはお好みで。

2 迷わずに一気に、ハガキいっぱいに絵を描きます。ヘタでも自分らしく!

3 色をつけるときは、トントンと絵の具を置くように。輪郭からはみ出しても大丈夫。

4 絵の具は24色を愛用。水で色を薄くしたり、他の色と混ぜたりしながら。

5 バランスを見て、名前のハンコを押して。篆刻(てんこく)をしている知人が彫ってくれました。

6 最後に墨で文字を。そのときの気持ちを正直に。人に送るときはその人を思い浮かべて。

本記事は『90年、無理をしない生き方』(すばる舎)からの抜粋です
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お元気シニアの代表・多良美智子さんの、いくつになっても機嫌よく過ごす秘訣
著書累計18万部! お元気シニアの代表、90歳を迎えた現在も、日々機嫌よく暮らす多良美智子さん。体の衰えはあるも「当たり前のこと、しかたない」と淡々と受け入れ、愚痴をこぼさない。それは昨日今日始まったことではなく、これまでずっと続けてきた「無理をしない」生き方の集大成。高い理想は持たず、できることを楽しむ。大きな幸せを求めず、1日の中に小さな幸せをたくさん見つける――。そんな、地に足のついたこれまでの人生を、思い出とともに振り返ります。
戦争の語り部として、長崎の被爆体験も。巻末では大人気シニアブロガー・ショコラさんと対談、老後生活の楽しい過ごし方を語り合います。
多良美智子(たら・みちこ)
昭和9年(1934年)長崎生まれ。8人きょうだいの7番目。戦死した長兄以外はみな姉妹。小学生のとき戦争を体験、被爆する。戦後すぐに母を亡くし、父や姉たちに育てられる。27歳で結婚後、神奈川県の現在の団地に。10年前に夫を見送り、以来ひとり暮らし。
2020年に当時中学生だった孫と始めたYouTube「Earthおばあちゃんねる」では、日々の暮らしや料理をアップし、登録者数16万人を超える大人気チャンネルに。お元気シニアの代表として、多くの同世代や後輩世代に支持されている。90歳となった今も、体の衰えを感じつつ「それはそれ」と受け入れ、日々ひとり暮らしを満喫している。
累計18万部の著書に『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』『88歳ひとり暮らしの 元気をつくる台所』(すばる舎)。
Earthおばあちゃんねる