(『天然生活』2021年7月号掲載)
無理なく続ける秘訣は“気負わず、気楽に”
料理研究家の“グー先生”こと林幸子さんが、実家に料理を届け始めたのは20年ほど前から。
いまも大阪に住む母親におかずやスープを送っているという大先輩です。
「最初は両親も若くて、『多めにつくったから食べてみて』なんていう気軽さで届けていました。いまも定期的に届けているわけではなくて“気が向いたら送る”くらいのゆるさ。母は喜んで食べてくれるし、感想も教えてくれますが、私の料理をあてにはしていないの。おかげでこちらも気負うことなく、無理なく続けられています」

料理の品数や量を、多くしすぎないこともポイントだそう。
「実家の母は94歳になりますが、台所仕事ができるくらい元気。だから、好きなものを食べる自由を尊重したいし、料理もしてほしい。ていねいにとっただしや、切っただけの野菜も役に立つみたいです」
“気負わず、気楽に”がモットーの林さんのつくりおき。ですが徹底して気を付けているのは、衛生面と先方の負担にならないこと。
「使い捨て容器に抵抗のある方も多いと思うけど、洗わなくていいのは親にとっても楽なんです。季節問わず、料理にはしっかり火を入れ、急冷するのを忘れずに」
感想を聞けば親の近況もわかります。
「料理の固さや味つけなどの好みを聞き、次回に生かしていくといいですよ。会えなくても“いつも気にかけています”のメッセージは、料理を通じて伝わります」
〈撮影/有賀 傑 取材・文/河合知子〉

林 幸子(はやし・ゆきこ)
料理研究家。東京・表参道の料理教室「アトリエ・グー」主宰。“グー先生”の愛称で雑誌、TVで活躍中。著書は『親に作って届けたい、つくりおき』(大和書房)など多数。