鎌倉駅西口徒歩3分、おやつと雑貨の「あまいみせ ミニ」
観光客で賑わう東口とは打って変わって、のどかな暮らしの風景が広がる鎌倉駅西口。ロータリーを抜けて徒歩3分、スーパーKINOKUNIYAの裏手にひょっこり佇むキオスクのような小さなお店が、料理家のなかしましほさんが新しく始めたテイクアウト専門店「あまいみせ ミニ」です。

なかしまさん自身が店番をしていることも多いのだとか。この日も「おはようございます〜」とにこやかな笑顔で迎えてくれました
なかしまさんといえば、東京・国立にあるおやつの人気店「foodmood(フードムード)」の店主でもあります。今回、新たに鎌倉にお店をオープンした理由を聞いてみました。
「鎌倉に住むようになって7年が経ちました。国立のお店は、コロナ禍で行き来が難しくなってしまった時期もあり、オンライン中心の販売に切り替えたんです。いまでは少しずつ国立のお店も店頭営業を再開しているのですが、自分の暮らしに近い横浜・鎌倉方面でもお客様が直接お菓子を買える場所をつくれたらいいなと思ったのがきっかけですね。このエリアの方々にもすごく喜んでもらえています」
お店にはフードムードのおやつに加え、『ほぼ日』と共同でつくったおやつシリーズや、姉である三國万里子さんの著書、なかしまさんおすすめの調味料や雑貨も並びます。


三國万里子さんのぬいぐるみ作品が抽選で当たるプレゼント企画を毎月実施中。3月の作品は「ねこのプロレスラー」

フードムードのお菓子に合うようブレンドされた、名古屋のcoffee Kajitaのオリジナルドリップバッグ。パッケージには昨年末に迎えた保護犬「あん」が描かれている
なかでも目を引くのは、なかしまさんがセレクトした韓国のトートバッグや雑貨類。

美術家のイ・ナヨンさんによるシルクスクリーン小物はアスパラガスのモチーフがチャーミング(マスキングテープも販売中)。右のカラフルなトートバッグはソウルのブランド「MILLIMETER MILLIGRAM」のマンスリートート。誕生石が色のイメージに
長年にわたり韓国を行き来しているなかしまさんのお気に入りを集めた、個性あふれるラインナップです。
“50代のいま”だからこそ、始められたお店
お菓子を軸に、なかしまさんのいまの“いち推し”が集まった小さな空間には、なかしまさんの好きなものがぎゅっと詰まっています。

「この店には『私の好きなものを置こう』って決めていたんです。50代を迎えて思ったのが“この先どうなるかわからない”ということ。気持ちや体力の面でも、ずっと好きなことを続けていけるかどうかわからない。だったらいまのうちに、やりたいこと、好きなことをやってみようと思いました」

国やテイストはまぜこぜ。好きなものを置くけれど、かわいくなりすぎないよう少し素っ気ないくらいのイメージに
お店づくりで思い描いたのは、なつかしいタバコ屋さんや、韓国でよく見かける売店のような風景。
「韓国の売店のスタッフさんは、営業中にごはんを食べたりみんなでおしゃべりしていたり、きっちりし過ぎてない感じが好きなんです。そこが人間らしいなと思って。お店って、そのくらい自由でゆるやかなものでもいいのかもしれません」

店名の「ミニ」の由来を聞いてみると、「“小さい”という意味はもちろんありますが、カタカナで書くと記号っぽくて面白いなと感じたんです。言葉の響きや文字としてのかわいらしさも自分の中で大事にしていて。あえて英語にせず、昔ながらの商店のような形でやりたくて、支払いも現金のみ。とことん時代とは逆行しているんですけど」となかしまさんは笑います。

『あまいみせ ミニ』では、コーヒーのテイクアウトやその時々の限定おやつも楽しめます。
お店の前のベンチで、おやつと一緒に縁側気分でひと休み。鎌倉の新しい過ごし方を楽しめるお店に、ゆるりとお散歩がてら訪れてみてはいかがでしょうか。

この日の限定おやつは、なかしまさんの故郷・新潟のいちご「越後姫」を使った豆花。「今後新潟のおいしいものも、もっと紹介していけたらと思っています」
〈撮影/衛藤キヨコ〉
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『天然生活』2025年6月号の連載「食後景日記」では、お店を始めたことへの思いや新しい暮らしについて、なかしまさんの文章で紹介しています。あわせてお楽しみください。