石木花・後藤さんに聞く、暮らしを彩る「盆栽」の世界

「盆栽」と聞くと、みなさんどのようなイメージをお持ちでしょうか?
かっこいい、クールジャパン、『ドラえもん』に出てくる“カミナリのおじさん”など……最近はポジティブな印象を持たれる方が増えてきたような気がします(カミナリのおじさん…?)。
でも、なんとなく敷居が高い印象があって、興味はあるけれど、ちょっと難しそう、という方も多いかもしれません。
これから数回の記事にわたり、盆栽の世界についてのあれこれや、楽しみ方や育て方を紹介していきます。この記事がみなさんにとって新しい世界の扉を開くきっかけになれば嬉しく思います。

ルーツは「自然を愛し楽しむこころ」
そもそも盆栽とは?
盆栽の定義は、盆=鉢に、栽=植物を植えて、栽培しているもの、です。
その起源はとても古くて、今から約1300年前に描かれた中国の壁画の中に盆栽のようなものが登場することから、少なくともその頃には盆栽のような形で自然を暮らしに取り入れることが楽しまれていたことがわかっています。
この頃はまだ、自然の山野から掘り上げた植物をそのまま盆に飾るだけのもので、「盆景(ぼんけい)」などと呼ばれていました。それが平安時代の頃に日本に渡り、時代の中で日本らしい「侘び寂び」の美意識や禅の精神などの影響を受け、現在の盆栽になったといわれています。
ルーツを辿ると、じつはとてもシンプルで、ありのままの自然を盆の中で楽しんでいたということが分かります。難しいルールや敷居はなくて、自然を愛で楽しむという文化が盆栽の起源なのですね。

鎌倉時代は僧侶のなかでブームに! 禅とともに育まれた「盆栽」の楽しみ
「自然を愛でるこころ」が盆栽のルーツですが、長い歴史の中で育まれ受け継がれてきた精神性も、盆栽の大きな魅力です。
とくに禅の文化の中で、盆栽らしい精神性は育まれました。
平安時代の頃に日本に盆栽が渡ってきて、やがて鎌倉時代の禅宗の僧侶の間で盆栽が流行ったのですが、そもそも、盆栽を鑑賞することは楽しみでもあり、一種の禅でもあったとされています。
1鉢の中には世界があり、小さな木も大木に等しい……。
というような、盆栽ならではの精神性は仏教的な価値観の中で育まれました。また、たとえば少し枝が枯れていたり、曲がっていたり、完全な姿ではなかったとしても、鉢の中で生きる姿はそのままでこそ自然であり、美しい、というような美意識もこの頃の禅文化の中で育まれたものです。
やがて、盆栽が庶民の間で親しまれるようになると、より理想的で美しい形が好まれるようになっていきます。枝は細やかに広がり、幹は太く、力強い姿、というように、より美しく、芸術的な姿を探究するようになります。この頃には栽培技術も進歩して現代に通じる盆栽の姿が完成されました。
江戸時代になると一大園芸ブームが到来して、盆栽は園芸の花形として人気を博し、多くの人々を魅了しました。

田安家邸園図 第1巻 雲涛 江戸時代 国立国会図書館蔵

後藤卓也(ごとう・たくや)
山形県村山市で盆栽や花器を制作する株式会社石木花・代表取締役。日本の自然、日本の文化、日本の伝統に関心をもち、見つめ直すきっかけとなるような、新たな価値を持った商品を発信する。
自社ECサイトは、GMOペパボ主催の『カラーミーショップ大賞 2023』優秀賞を受賞。
石木花:https://www.sekibokka.jp/