キューブ型の結晶が不思議な「パイライト(黄鉄鉱)」

左が単結晶のパイライト、右がいくつかの結晶が融合したクラスター
菅沼 それでは、今回の川添さんの石を見せていただけますか?
川添 はい。「パイライト(黄鉄鉱)」です。結晶構造が分かりやすいように、ふたつ持って来ました。
菅沼 自然のものなのに、立方体の形をしているのが不思議ですね。

立方体の結晶構造が不思議なパイライト。まるで彫刻のようにも見えます
川添 金色の塊なので一見高価そうに思えるんですけど、結構いろいろな鉱山からもりもり出てくるらしくて お手頃なんですよ。
なんといっても、この形がすごく幾何学的で面白くて、ミネラルショーに行くとついつい目が いってしまって、たまに買っちゃうんですけれども。



菅沼 川添さんは幾何学模様がお好きなんですね。古代遺跡のようにも見えてカッコいいです。
川添 なんとなく、都市の模型っぽくも見えますよね。どちらも新宿のミネラルフェアで買ったのですが、会場の片隅でテーブルの上にパイライトだけをゴロゴロ並べて売っている白人のおじいちゃんがいて。
菅沼 パイライト専門店!
川添 そのためか、おじいちゃんのパイライトはとてもお買い得で、正立方体のものは確か500円、クラスターの方も1,600円と破格でした。
一期一会だった、パイライト売りのおじいちゃん
菅沼 現物もきれいですが、写真で見ると、一段と重厚感が増しますね。
川添 ほんと、不思議ですね。肉眼で見ていただけでは、正立方体の表面にある小さな段差に目が行きませんでしたが、この幾何学的な段差がカッコよく見えます。
クラスターの方は、角がこんなに削られているとは気が付いていませんでした。おかげで、謎の古代遺跡感を醸し出していますね。


菅沼 なぜ、パイライトは立方体なのですか?
川添 原子構造からそうなるらしいです。一般的には立方体が多いらしいんですけど 、8面体ですとか 5角12面体という、もはやどんな形か想像できないですけど、いくつかパターンかあるそうです。
なかには立方体が違う角度で融合しているものもあって面白いんですよ。「貫入双晶(かんにゅうそうしょう)」と呼ばれて、鉱物ではよく見られる現象らしいのですが、立方体のパイライトはそれが際立って見える気がします。見ていて飽きないですね。
菅沼 立方体がお好きなんですね。
川添 そうかもしれませんね。今年の池袋のミネラルショーでは、小さな立方体が都市模型のようにずらーと並んだパイライトのクラスターが売っていて。
素晴らしすぎてずっと眺めていたのですが、これが高くて……。
8万円ぐらいしたので買えませんでした。もし勢いあまって買っていたら家庭問題に発展していたと思います。

角は削れているものの、1600円と破格のクラスター
菅沼 おじいさんのお店にお手頃なクラスターがあるのでは?
川添 それが、私が買った年以降、そのおじいちゃんを見かけないんですよねー。どうしちゃったのか……。
菅沼 いつかまた会えるといいですね。
川添 そうですねー。
5月の終わりに新宿のミネラルフェアがありますから、次回はそこで新しい鉱物を見つけて、ここで紹介できれば思います。もしおじいちゃんがいたら、またパイライトになっちゃうかもしれませんが。
ほかにも、恐竜の糞の化石とかも持っているのですが、興味ありますか?
菅沼 ええ、まぁ……。あ、今度、編集部のメンバーと恐竜の赤ちゃんの化石を見に行くのですが、川添さんもいかがですか?
川添 いいですね! ぜひ。
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▼「美しき鉱物の世界」前回までのお話はこちら
<撮影/山川修一 参考文献/『楽しい鉱物学』『楽しい鉱物図鑑』(ともに、堀 秀道・著、草思社・刊)、『岩石・鉱物・化石 DVDつき(小学館の図鑑NEO 18)』(荻谷 宏、門馬綱一、大路樹生・監修、小学館・刊)>