(『天然生活』2024年8月号掲載)
奥平さんの涼やかな家の工夫
夏の暑さを避けるのではなく、しなやかに受け止める古い家での暮らしです。
東からの光を遮るすだれをかける
東向きの窓から、午前中はたっぷり日差しが降り注ぐ居間。

軒先のフックに吊るすだけで、作業はほんの一瞬。庭の中央にあるいちょうの木もいい木陰をつくってくれる。「すだれをかけると、夏が来たなと思いますね」
冬場はありがたくその恩恵にあずかりますが、夏場はすだれをかけて、強い日差しをやわらげます。

窓を開けた時の日差しを遮るために、すだれは1張りのみ使用。蚊取り線香もセットで活躍する夏の必需品
「梅雨が明けたころからすだれの登場。自然素材で、古いこの家にしっくりなじみますよね。隙間から風も入るし、庭の緑も透けて見えるので、あまり圧迫感がありません」
家の中で風の通る場所を探して移動
エアコンの力はあまり使わない奥平さんの家では、自然の風が「涼」を届けてくれる。

作業机を仕事部屋から居間の窓際に移動して、山からの風を受けながら仕事。夏場の食事もここが定位置
「一番風通しのいい居間の窓際に机を移動して、ここで動画編集などの作業をすることもよくあります。風にそよぐ草や花も、涼しさを演出してくれます」
キッチンの東向きの窓も、風通しがよく、夏場の料理も思った以上に快適だそう。

風通しのよいキッチン東側の窓は、最近、自分で木枠を取り付けた
ガラスを愛でて涼しさを感じる
ガラス好きの奥平さんは、冬でも耐熱ガラスに温かい飲み物を注いでガラス製品を愛用しています。
とはいえ、やはりガラス製品が生き生きと活躍するのは夏。居間の明るい光を通し、水滴のついたガラスはとても軽やかで涼しげです。

ピッチャーの「tori」、グラスの「uku」は、どちらも奥平さんデザイン。ピッチャーに氷をたくさん入れてから、コーヒーや熱いお茶を注ぎ、冷たい飲み物をつくるのが夏のお気に入り
自身で開発した「浮く」グラスは、テーブルと飲み物の間に空洞ができ、より涼やかに見える効果も。
夕風が気持ちいい縁側でお茶や食事
庭に面した広めの縁側は、この家の夏の特等席。風が心地よく通り、真夏でも涼しく感じるほど。

居間と縁側に段差がほとんどないので、足を投げ出しやすく、ものを運んだりもしやすい。お客さんが来たときは、縁側に食卓を広げおもてなしをすることも
以外、この縁側は居間の延長のように使っています。
「本格的に使うときは、大きなテーブルやちゃぶ台を持ってきたり、七輪で魚や肉を焼いたり、固形燃料の火でごはんが炊ける『釜くらさん』などで、この場で調理まですることも」

作業の合間、自家製のジンジャーエールと梅干しでクールダウン。ジンジャーシロップには赤とうがらしとこしょうが入って、ピリリ大人の味
<撮影/山川修一 構成・文/鈴木麻子>
奥平眞司(おくだいら・まさし)
YouTubeチャンネル『OKUDAIRA BASE』主宰。料理や季節の手仕事、庭仕事、旅行など、「暮らしを楽しむ」動画を配信。チャンネル登録者数は36万人を超え、広い世代に支持される。暮らしの道具を扱うブランド「ki duki(キヅキ)」で、キッチンツールの開発やデザインも行う。https://linktr.ee/okudaira_0421/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです