• 児童文学作家・角野栄子さんの自宅は、旅へと誘う“本棚の家”でした。家中にある計20台ほどの本棚の中身を、じっくり見せてもらいました。
    (『別冊天然生活 本は友だち』より)

    旅へと誘う「本棚の家」

    きれいないちご色が印象的な、天井まで届く本棚。文庫本がきっちりと収まっている本棚。扉付きの本棚。家中どこにいても、いろいろな本棚が目に入ってきます。

    その数、合計20台ほど。児童文学作家・角野栄子さんの自宅は、まさに“本棚の家”と呼ぶのにふさわしいものでした。

    画像: 旅へと誘う「本棚の家」

    「本は、あまり読み返すほうではないんです。私にとっては、最初に読んだときの印象が大事なので。それに、まだ読めていない新刊本もたくさんあるでしょう。とはいえ、本は捨てられないのよね」

    そう、角野さんは笑います。代表作のひとつである『魔女の宅急便』や、翻訳を手がけているアンデルセン童話。そのための資料として集めた魔女やアンデルセンに関する本も、本棚の一角にびっしりと並んでいました。

    「でも、資料を使うことはあまりしません。私は基本的に、自分の感じたことや体験をもとに物語を書くようにしていますから」

    20代半ばでブラジルに渡った角野さん。帰国後、ひょんなきっかけで現地での日々を綴った作品でデビューし、児童文学作家としての道を歩みはじめました。海外の児童文学を読むようになったのは、自身が子どもの本を書くようになってから。リンドグレン、ケストナー、ピアス。どれも、いまは大好きな作家です。

    「自分が書くものは、主に自分の体験から生まれるので、少女が主人公の話が多い。でも読むとなると、案外、少年の話が好きなんです。背伸びしない正直なところ、何かに夢中になると、ほかは目に入らないところ。そんな少年特有の、子どもっぽさがかわいいなと思いますね」

    本を読むことも書くことも、旅をすることと似ている

    それにしても、角野さんの本棚に並んだ本の、なんと多彩なこと。村上春樹、小川洋子などの日本人作家の小説、写真家・星野道夫のエッセイ、文化人類学の本、北欧ミステリー……。子どものころから、好奇心のおもむくままに、本を手に取ってきました。

    「私は旅が大好きで、いままでヨーロッパやオーストラリア、ブラジルなど、世界中のあちこちを訪れてきました。本を書くことも、読むことも、旅と似ていると思うの。未知の世界に出合えるから」

    毎晩、寝る前に大好きな本を読みながら、「こんな本を書いてみたい」と思うこともあるそうです。

    たくさんの本棚と本に囲まれた角野さんが紡ぎ出す物語。それらは、きっとこれからも、私たちをワクワクする旅へと連れていってくれるのでしょう。

    〈撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子〉

    本記事は『別冊天然生活 本は友だち』(扶桑社)からの抜粋です



    『別冊天然生活 本は友だち 人生を変える一冊と出合うために』(扶桑社ムック)

    画像6: 『魔女の宅急便』作者・角野栄子さんの本棚を拝見。計20台の棚に並ぶ、捨てられない本の数々。好奇心のおもむくまま“未知の世界”への旅をたのしむ

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    ◆「本」を愛する方々による、読書の楽しみや喜びを改めて教えてくれる1冊◆
    作家・角田光代さん、絵本作家・角野栄子さん、女優・中嶋朋子さん、作家・北杜夫さんなど、本を愛する方々の本棚を紹介。随筆家の山本ふみこさん、ミュージシャンの坂本美雨さんなど、様々な分野で活躍する方々の愛読書も掲載しています。書店のブックカバーや本の仕立て直し屋さん、ブックディレクターの幅允孝さんによる読書すごろくなど、いつもと違った角度から本を楽しめる1冊です。

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    角野栄子(かどの・えいこ)
    1970年作家デビュー。1985年刊行の代表作『魔女の宅急便』は今年40周年を迎える。著書は250冊以上。2018年3月、「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞を受賞。東京に「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)が開館。



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