(『天然生活』2024年8月号掲載)
カビや虫、嫌なにおいは、身近な自然素材で解決。おすすめは青森ヒバ
湿気が気になり始める初夏のある日。ワタナベマキさんのご自宅を訪ねると、玄関からさわやかなヒバの香りが迎えてくれました。
ワタナベさんの家は、3年前に引っ越した、LDKとバルコニーがつながる開放的なマンション。以前よりも緑が近いため、夏場の湿気が気になるようになったそう。
料理を生業としていることもあり、湿気による雑菌、虫は天敵。だからこそ、家のあちこちで防虫、防カビ、防臭の工夫を取り入れています。
一番のおすすめは、青森県で育った天然木のヒバ。数年前にヒバチップの作用を知って以来、玄関やリビングのほか、床掃除などの家仕事にも取り入れています。
「ヒバは抗菌作用もありますし、自然な香りが気持ちがいいんです。時間がたったらヒバオイルを垂らせば効果を復活できますし、最後は防虫対策として植木鉢の土の上に敷くこともあります。わが家の猫が土を掘り返すのを防ぐ効果もありますね」

リビングには湿度計があり、できるだけ40%に保つ。湿気・消臭対策として、大きめの陶器に青森ヒバのチップを入れている。自然な香りは愛猫たちにも安心
人にも地球にもやさしい素材を選べば、使い心地も快適
そのほかにも「食品の防虫対策に月桂樹ととうがらし」「キッチンの除菌にアルコール」「クローゼットの除湿に重曹」など、さまざまな知恵を教えてくれました。特徴的なのは、万一口に入れても安心であること、使い道がひとつではないこと。人にも地球にもやさしい暮らしの工夫です。
「専用の化学洗剤などをまったく使わないわけではないですが、できれば暮らしに安心して取り入れられる方が気持ちがいいなと思っていて。重曹は掃除にも使えるし、除湿にも使える。月桂樹やとうがらしは料理にも使いますし。キッチンシンクやガス台を使うたびにアルコールスプレーでひと拭きしておけば、汚れもたまりません」
そして、ワタナベさんの暮らしの知恵は、一年を通じた心地のいい循環にもつながっているよう。夏場に除湿に使ったヒバ材チップは、冬場は水を含ませて加湿材に。ぬか床を小さなかめにつくることで、発酵が進みやすい夏場には冷蔵庫に収まり保存ができて、カビのリスクも減りました。昔の知恵といまの知恵を上手に組み合わせて、夏もその次の季節も快適に整えています。

クローゼットには、防湿・防臭効果のある重曹、防虫効果のあるユーカリをびんに入れて。ユーカリは猫が嫌う葉だが、この中なら安心
〈撮影/林 紘輝 取材・文/竹田理紀〉
ワタナベマキ(わたなべ・まき)
料理家。グラフィックデザイナーを経て、料理家に。シンプルな材料と手順、季節の手仕事を大切にしたレシピは、多くの女性から支持されている。著書に『五感が喜ぶおいしい組み合わせ。おつまみ100』(宝島社)、『マキさんの極上シンプルおにぎり』(ワン・パブリッシング)など多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです