(『天然生活』2024年9月号掲載)
家族との思い出は、生き方を取り戻す手立て
岸田さんが考える、家族とは?
「人間が家族をつくる一番の目的は、本来はきっと種の保存。何人かで固まっていれば、何かあったときに助かる確率が上がるし……。でもやっぱり、そんな機能みたいなものだけじゃなくて、私の場合は自己肯定としての家族、という意味合いが大きい。
家族との歴史って、自分のルーツを知ることでもあるし、生まれてきて……なんていうかな、生きてきたことの目次みたいな存在というか。迷ったとき、地に足がつかなくなったときに、家族と過ごしてきた時間とか、そのときに自分が何を考えていたとか、両親に私はどう育てられていたかとか、そういった記憶は、いい意味でも悪い意味でも自分の生き方を取り戻す手立てになる、自分のことを愛する手掛かりになると思っていて。
お父さんは中学生のころに死んじゃいましたけど、やっぱりお父さんが何を考えていたかとか、何を思って私を育てたかとかは、もう予想しかできないんだけれど……でもその予想が、もしかして合ってるんじゃないかな? なんて感じられるときがたまにあって。そんなとき、とても幸せな気分になるんですよ。『私、愛されてたな』って」

前作から2年半ぶりとなる、人気エッセイシリーズ待望の3作目。SNSでも話題となった、表題エッセイを含む18本を厳選
〈撮影/杉能信介 取材・文/福山雅美 構成/鈴木麻子〉

岸田奈美(きしだ・なみ)
1991年生まれ。兵庫・神戸出身。関西学院大学人間福祉学部社会起業学科卒業。自称:100文字で済むことを2000字で伝える作家。デビュー作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)が話題となりForbesの「世界を変える30歳未満の30人」に選出される。「note」も更新中。
X(旧ツイッター):@namikishida
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです