(『天然生活』2024年10月号掲載)
年を重ねていくごとに「やわらかさ」を少しずつ
ロゴTシャツやメンズ風のシャツ、プレスがかかったスラックスやスニーカー、トラッドシューズ。色は圧倒的に黒が中心。少し前はこういった、キリリとしたマニッシュなアイテムの着こなしを好んでいたという植村さん。ところがここ最近、自身の装いが少しずつ変化してきたと語ります。
「髪の色を明るくしてから、いままでのバランスがしっくりこなくなったんです。いまでも黒い服は着ているのですが、軽さのあるリネン素材やフェミニンなディテールがあるアイテムなど、どこかにやさしい雰囲気をもたせたくなりました」

「エリテ」のワンピースは、ヴィンテージのスワトウ刺しゅうのテーブルクロスをリメイクしたもの。なかのカットソーは「ヴェリテクール」、センタープレスのスラックスや革のバッグ&靴で、ワンピースの甘さを引き締めて
長年さまざまなスタイリングを手掛けてきた植村さん。けれど若いころは、自身のおしゃれに関しては、あまり頓着していなかったと振り返ります。
「好きな服をモデルに着せて撮影することで、『おしゃれ欲』が満たされてしまっていたんです。自分はあくまで『裏方』という感じ。動きやすさ重視で、Tシャツにデニムばかりの日々でした」
ところが個人向けのコーディネートサービスを始め、さまざまなスタイルのお客さまと接し、見る服の量も増えたことで視野が広がり、自然と服装が変化していったそうです。
お客さまに「気負わず、がんばりすぎず、おしゃれを自由に楽しんでほしい」と伝え続けてきたことで、自分自身に関するおしゃれも、「こうでなきゃ」という気負いや思い込みが少しずつ減っていったのでした。
いまの自分に合うスタイルを試行錯誤し、アップデート
その後年齢を重ね、若いころは何となく手が伸びなかったフリルやレースなどを用いたアイテムも、髪色の変化もあいまって自然となじむようになってきました。
「お客さまを見ていても、女性は年を重ねるごとに自然と『エレガント』や『フェミニン』が似合うようになっていくようです。かつての服が似合わなくなり、とまどうこともありますが、逆にいまの自分だからこそ合う服を見つけ、スタイルをアップデートしていく。おしゃれの楽しみって、そのつみ重ねなのかなと思います」
植村さんのスタイルの変遷
20代: スタイリストとして独立。「裏方」としての意識が強く、おしゃれ欲は仕事で満たす。Tシャツにデニム、パンプスが定番
30代: 個人向けスタイリングの仕事をスタート。20代に引き続き辛口マニッシュな服が好きだけれど、きれいめなトラッド服の割合が増えていく
40代〜: 数々のお客さまに接するうちに自身のおしゃれの視野も広くなっていき、少しずつフェミニンさがあるアイテムに袖を通す機会も増えていくように
〈撮影/山川修一 取材・文/田中のり子〉
植村美智子(うえむら・みちこ)
雑誌、広告、タレントのスタイリングなどで幅広く活躍。2010年にファッションコーディネートサービス「Liltin’(リルティン)」を立ち上げ、個人向けコーディネートを開始する。天然生活webの連載「おしゃれのABC」も好評。著書に『洋服の選び方』(マイナビ文庫)、電子書籍『「今の自分」に似合う服』(扶桑社)。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです