• 野菜や保存食をつくったり、シェアしたり。支え合い、自然とともに営む暮らしからは真の豊かさとは何なのかが伝わってきます。今回は、布作家の早川ユミさんに、長年ともに暮らし、学び合ってきた弟子たちとの日々について伺いました。
    (『天然生活』2024年11月号掲載)

    弟子たちに、仕事と暮らしを伝えていく

    高知県香美市の、山のてっぺん。布作家の早川ユミさんと夫で陶芸家の小野哲平さんが、自然に抱かれたこの場所に暮らし始めたのは、1998年のことです。

    20年以上続けている弟子たちの受け入れは、早川さんが続けてきた「つながる暮らし」のひとつ。

    3年をひとつの区切りとして卒業していく徒弟制度は、近ごろ違った展開を見せてきたとか。

    「これまでは、卒業したら帰る子が多かったけれど、最近ここに定住しようと考える子も増えてきたんです」

    なかでも画家のまりぼんさんは、早川さんの次男・鯛さんと結婚。

    ふたりは創作する同志であるとともに家族にもなりました。

    「種まきびと」として暮らし、仕事をする実践のなかから心地よい社会のありかたを探求してきた早川さん。

    未来のためにまいた種は芽吹き、いまそれぞれの形で根を下ろそうとしているようです。

    新しい暮らしの形
    仕事と暮らしを伝えていく

    25年ほど前に始めた、弟子の受け入れ。

    仕事を教えるだけでなく、ごはんづくりや畑仕事、掃除など暮らし全般をともにし、「学校では教わらない大切なこと」を伝えています。

    画像: はぎれも集めて別の作品に。「捨てないことで豊かになる」ことも、弟子へと伝えたいことのひとつ

    はぎれも集めて別の作品に。「捨てないことで豊かになる」ことも、弟子へと伝えたいことのひとつ

    「受けてきた恩や、授かってきた学びを次の世代に手渡す『恩送り』のようなもの。親子のような人間関係は、わけあたえる経済の根っこにもなります」

    画像: 余り布を生かしてつくるワッペン。「私と同じじゃなくていい。自分らしいちくちくを見つけてくれたら」

    余り布を生かしてつくるワッペン。「私と同じじゃなくていい。自分らしいちくちくを見つけてくれたら」

    新しい暮らしの形
    弟子が家族になる

    「お弟子」のひとりであった画家のまりぼんさんが、早川さんの次男・鯛さんと結婚し家族に。

    画像: 鯛さんとまりぼんさんのアトリエは、息子の海くんが眠る居間のすぐ隣。創作と暮らしが隔てなくつながる

    鯛さんとまりぼんさんのアトリエは、息子の海くんが眠る居間のすぐ隣。創作と暮らしが隔てなくつながる

    早川さんの畑だった場所に新居を建て、1歳8カ月になる息子の海くんと3人で暮らしています。

    「最初は全然気がつかなかったの」と言いながら、新しい家族を愛情深く見つめる早川さん。

    画像: 「家づくりは地域の人に」とのふたりの願いをかなえた新居。「私たちも気づかない素晴らしい発想でした」

    「家づくりは地域の人に」とのふたりの願いをかなえた新居。「私たちも気づかない素晴らしい発想でした」

    画家と布作家としての関わりも深まっています。

    画像: 最初は布仕事を学んでいたまりぼんさんは、早川さんの助言で絵を描くように

    最初は布仕事を学んでいたまりぼんさんは、早川さんの助言で絵を描くように



    <撮影/公文美和 取材・文/玉木美企子>

    早川ユミ(はやかわ・ゆみ)
    1980年代よりアジアを旅し、山岳民族たちの生活の知恵と美に触れて「土着の感覚」での服づくりを行う。高知の山間に暮らし、小さな果樹園や田畑を耕す。日々のレシピからフェミニズム、新しい経済のありかたまで幅広い著作のファンも多い。『種まきびとの絵日記 はるなつあきふゆ 増補改訂版』(扶桑社)が発売中。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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