(『天然生活』2024年11月号掲載)
新しい暮らしの形
弟子が独立し、定住し店を開く
高知県香美市の、山のてっぺん。布作家の早川ユミさんと夫で陶芸家の小野哲平さんが、自然に抱かれたこの場所に暮らし始めたのは、1998年のことです。
20年以上続けている弟子たちの受け入れは、早川さんが続けてきた「つながる暮らし」のひとつ。
早川さんの弟子を卒業した村上千世さんは、書店「うずまき舎」を開店し、早川さんの執筆活動の手伝いにも携わっています。

書棚はひとつのテーマから関心が広がるような配置を意識。うずまき舎では依頼に応じ選書も行っている
2024年にはうずまき舎が早川さんのハンドメイド本『土着する』の発行元に。

村上さんが選ぶ「新しいつながり」を考えるための3冊。「お金や労働への新たな視点をもらえます」
「私は書くために本をたくさん読むので、近くに千世ちゃんのお店があることがとてもありがたいんです」

香美市の山の上に建つ「うずまき舎」。開店から10年がすぎ、県外からここをめざして訪ねてくる人も増えたのだそう
新しい暮らしの形
地元のお祭りは大切なコミュニケーションの場

村の氏神様のひとつ「大元神社」は、早川さんのお気に入りスポット。「みんなで境内の掃除をすると、なんだか気持ちもすっきりするんです」
「道路や水など、ここでは生きるための環境が、村人との仕事で守られているんです」と早川さん。
神社のお祭りも、宗教儀式というより大切なコミュニケーションの場と考えています。

大元神社の境内には、数メートルの巨石も。「ここには巨石信仰があったのかもしれないと思っているの」
「山で暮らせるのは、助け合いのつながりあってこそ。弟子たちにも『草刈りやお祭りには、積極的に参加してね』と伝えています」
つながりを楽しむための小さな工夫
コミュニケーションをしっかり取る

連絡手段が多様になったからこそ、顔を合わせた対話を大切に。
「先日、弟子から『ごまの壺を割りました』とメッセージが届いたの。言いにくいことこそ、直接話さないとね」
ごはんに誘う

けっして豪華なおかずはなくても、人が訪ねてきたらごはんに誘い、一緒に食事をするのが早川さんの日常。
「タイの山岳民族に教わった、心豊かな暮らしの知恵です」
もらったら分ける

たとえば畑が豊作なら、抱えずにおすそわけを。
「移住したてのころ『もらったら別の人に返すんだよ』と教わってびっくり。自然な贈与経済がここには息づいているんです」
<撮影/公文美和 取材・文/玉木美企子>
早川ユミ(はやかわ・ゆみ)
1980年代よりアジアを旅し、山岳民族たちの生活の知恵と美に触れて「土着の感覚」での服づくりを行う。高知の山間に暮らし、小さな果樹園や田畑を耕す。日々のレシピからフェミニズム、新しい経済のありかたまで幅広い著作のファンも多い。『種まきびとの絵日記 はるなつあきふゆ 増補改訂版』(扶桑社)が発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
				
				



							
							
							
							