• 本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、手仕事と本の世界を静かにつなぐロバの本屋店主・いのまたせいこさん。いのまたさんの心に響いた“この一冊”、今回は『黄色い本』『チボー家の人々』です。

    いのまたさんが選ぶ“この一冊”
    『黄色い本』『チボー家の人々』

    心地よい読書体験が味わえる本を教えてくれた、いのまたさん。今回おすすめしてくれたのは、高野文子著『黄色い本』と、ロジェ・マルタン・デュ・ガール著、山内義雄訳『チボー家の人々』です。

    黄色い本
    ジャック・チボーという名の友人

    画像: 『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(高野文子著 講談社)

    『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(高野文子著 講談社)

    高野文子の漫画がとても好きだ。

    『黄色い本』は、(おそらく)昭和40年代に女子高生だった主人公の実地子が、黄色い表紙の全5巻の本『チボー家の人々』を学校の図書室で借りて、学校の行き帰り、家に帰ってから、眠る前の布団のなかでも時間を見つけて読み耽りつつ日常生活を送る、というだけの話なのだが、実地子が本の世界にどっぷり浸かっている様子にものすごく親近感が湧いた。

    まだ読んだことのないこの黄色い本をいつか読んでみたいなぁと思いつづけ、随分たってから実際に読んでみた。結果、私も実地子と同じようにどっぷりとチボー家の人々の世界に浸かって暮らした。

    こういう話を漫画にしてしまう高野文子は本当にすごいと思う。

    チボー家の人々 全13巻

    画像: 『チボー家の人々 全13巻』(ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 山内義雄訳 白水社)

    『チボー家の人々 全13巻』(ロジェ・マルタン・デュ・ガール著 山内義雄訳 白水社)

    高野文子の『黄色い本』を読んでからいつか読みたいと思いつづけていた『チボー家の人々』。

    ある日、古本屋さんで漫画に出てくるのと同じと思われる白水社の全5巻のセットを手に入れたまではよかったけれど、パラパラ捲ってみると2段組みの小さな字のレイアウトで、最後まで読み切れる気がしなくてそのまま何年も本棚に飾ったままだった。

    だけど2023年の元旦に「今年は読めそう」と急に思ったので、枕元に5冊積んで眠る前に少しずつ読み進めることにした。

    物語の舞台は第一次世界大戦前後のフランス。当時のヨーロッパの若者であるジャックの気持ちの揺れや思考や行動を、見守る気持ちで読み進めた。

    約10か月かけてゆっくり読み進めたので、その一年間、私はジャックとともに生きていた。

    そして、戦争というものの虚しさをしみじみと思った。

    * * *

    天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。ロバの本屋・いのまたせいこさんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。

    天然生活2025年12月号(扶桑社・刊)

    画像: 『黄色い本』『チボー家の人々』本を愛する本屋店主おすすめの“心に響いた”この1冊/ロバの本屋・いのまたせいこさん

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    〈文/いのまたせいこ〉

    いのまた・せいこ
    東京で8年間「ROBA ROBA cafe」を営んだのち、山口県に移住。2012年、山間の集落にて元牛舎を改装し、カフェ併設の「ロバの本屋」を開店。店内には、紙ものや生活雑貨、毛糸なども選りすぐられ、展示や編み会も定期的に開催。紙の感触や経年変化を大切にしつつ、手仕事と本の世界を静かにつなぐ場を育む。
    HP:https://www.roba-books.com/
    インスタグラム:@roba_no_honya



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